「今日もクラスがバラバラだった」「声をかけても伝わらない」——集団保育のなかで、そんなもどかしさを感じたことのある保育士は少なくないはずです。特に、活動の切り替え時や行事前の慌ただしい時期は、子どもたちの気持ちがまとまらず、思うように保育が進まないと感じる場面が増えていきます。
クラスがまとまらないと感じるとき、つい「自分の力不足なのでは」と自分を責めてしまいがちですが、実はその背景にはいくつかの共通した要因があります。今回は、クラスがまとまりにくくなる背景と、保育士として意識しておきたい関わり方の視点について考えてみたいと思います。
「まとまらない」と感じる背景を整理する
クラスがまとまらないと一言でいっても、その状態にはさまざまな背景があります。まず考えたいのは、子どもたちの年齢や発達段階による違いです。低年齢児クラスでは、そもそも集団としてまとまって行動すること自体が発達の途上にあり、一人ひとりのペースがバラバラであることは自然な姿でもあります。一方、年齢が上がったクラスであっても、新年度直後や長期休み明けなど、生活リズムが崩れやすい時期は落ち着きを欠きやすくなります。
また、時間帯や活動内容によっても、まとまりやすさは大きく変わります。空腹や眠気を感じやすい時間帯、切り替えの多い忙しない活動の後などは、集中力が続きにくく、結果として収拾がつきにくい状態になりやすいものです。
「まとまらない」状態を保育士個人の力量の問題として捉えるのではなく、まずはどのような要因が重なっているのかを客観的に整理してみることが、状況を改善する第一歩になります。
声かけのタイミングと伝え方を見直す
集団保育における声かけは、内容そのものだけでなく、タイミングが大きな役割を果たします。子どもたちが別の活動に気持ちが向いている状態で指示を出しても、なかなか届きません。まずは子どもたちの視線や意識がこちらに向いているかを確認してから声をかけることで、伝わり方は大きく変わってきます。
また、一度に伝える情報量にも意識を向けたいところです。「片付けて、手を洗って、席に座って」というように複数の指示を一度に出すと、特に低年齢児にとっては処理しきれず、結果として行動につながりにくくなります。一つずつ、短い言葉で伝えることを意識するだけでも、子どもたちの反応は変わってくることがあります。
声の大きさやトーンも重要な要素です。大きな声で制止しようとするほど、クラス全体がざわついてしまうこともあります。あえて声のボリュームを落とし、子どもたちが「聞こうとする」姿勢を引き出すような関わり方が効果的な場面も少なくありません。
活動の組み立て方を工夫する
クラスがまとまりにくいと感じるとき、活動そのものの組み立て方を見直してみることも一つの視点です。待ち時間が長い活動が続くと、手持ち無沙汰になった子どもたちの気持ちが逸れやすくなります。活動と活動の間に短い手遊びや歌を挟むなど、隙間時間をできるだけ減らす工夫は、集団としてのまとまりを保つ助けになります。
また、活動の見通しを子どもたちに伝えておくことも効果的です。「これが終わったら、次は◯◯をするよ」と事前に伝えておくことで、子どもたちが心の準備をしやすくなり、切り替えがスムーズになる場合があります。
一斉活動と自由な時間のバランスを見直すことも、クラス全体の落ち着きに影響します。集団行動が続きすぎると子どもたちの集中力が切れやすくなるため、適度に個々のペースで過ごせる時間を組み込むことで、結果的にまとまりやすい流れを作れることもあります。
環境設定を見直す
保育室の環境そのものが、クラスのまとまりに影響を与えていることもあります。おもちゃや教材が目につく場所に置かれていると、活動中であっても子どもたちの気持ちがそちらに向いてしまうことがあります。活動内容に応じて、視界に入る情報を整理することも一つの工夫です。
また、座席配置や集まる場所の工夫も見直したいポイントです。特定の子ども同士が近くにいることで気が逸れやすくなる場合は、さりげなく配置を変えるだけでも落ち着きが生まれることがあります。
こうした環境面の工夫は、日々の保育のなかで少しずつ試しながら、クラスに合った形を見つけていくことが大切です。
一人で抱え込まず、周囲と連携する
クラスがまとまらないという悩みは、担任一人で抱え込みやすいテーマでもあります。しかし、複数担任制のクラスであれば、他の保育士と役割を分担しながら関わることで、子どもたちへの目の届き方が変わってくることがあります。
例えば、一人が活動を進行している間に、もう一人が気持ちが逸れている子どもに個別に声をかけるなど、役割を分けることで全体のまとまりを保ちやすくなる場合があります。日頃から、クラス運営について同僚と情報交換をしておくことで、いざというときの連携もスムーズになります。
また、経験豊富な先輩保育士に相談してみることも一つの方法です。同じような悩みを乗り越えてきた先輩からのアドバイスは、自分では気づかなかった視点を与えてくれることがあります。
まとめ
クラスがまとまらないという悩みは、多くの保育士が一度は経験するものであり、決して珍しいことではありません。子どもたちの発達段階や、その日の体調、活動内容など、さまざまな要因が重なり合って生まれる状態だからこそ、一つの正解があるわけではなく、日々試行錯誤しながら向き合っていくテーマだといえます。
大切なのは、うまくいかない状態を自分一人の責任として抱え込まず、声かけの工夫や環境設定の見直し、周囲との連携など、できることから少しずつ試してみることです。子どもたちにとって心地よい集団の時間をつくっていくために、焦らず、自分なりのペースで向き合っていってほしいと思います。
この記事の監修者

森 大輔(Mori Daisuke)
保育のせかい 代表
《資格》
保育士、幼稚園教諭、訪問介護員
《経歴》
2017年 保育のせかい 創業。2021年 幼保連携型認定こども園を開園するとともに、運営法人として、社会福祉法人の理事長に就任。その他 学校法人の理事・株式会社の取締役を兼任中。
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