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2026.08.16

2026.08.25

【保育士の実践】保育士の「声かけ」で子どもが変わる|言葉の選び方と伝え方の基本

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「何度言っても伝わらない」「注意しても全然聞いてくれない」「どう声をかければよかったんだろう」。保育の現場で、子どもへの声かけに悩む場面は日常的にあります。

同じ場面でも、声かけの言葉ひとつで子どもの反応がガラリと変わることがあります。ベテランの保育士が穏やかに一言声をかけると子どもが動くのに、同じことを伝えているつもりなのに自分だとうまくいかない。そんな経験をしたことがある保育士さんも多いのではないでしょうか。

声かけには、意識するだけで変わる「コツ」があります。才能や経験年数の差だけで生まれているわけではありません。この記事では、子どもに伝わる声かけの基本的な考え方と、実践的な言葉の選び方を場面ごとに整理してご紹介します。

声かけが子どもに与える影響

保育士の声かけは、子どもの行動だけでなく、自己肯定感や感情の発達にも深く影響します。日々の保育の中で何度もかけられる言葉が積み重なることで、「自分はできる」という感覚や「先生は自分のことを見ていてくれる」という安心感が育まれます。

逆に、否定的な言葉や命令口調が続くと、子どもは萎縮したり反発したりするようになります。「また怒られる」という緊張感が続く環境では、子どもは自分の気持ちや意見を出しにくくなってしまいます。

保育士の声かけは、子どもの行動を変えるためだけのツールではありません。子どもが「自分は大切にされている」と感じる経験の積み重ねであるという視点を持つことが、声かけの質を高めるための出発点になります。

「禁止」より「肯定」で伝える

声かけの基本として最初に意識したいのが、「〜しないで」という否定形より「〜しようね」という肯定形で伝えることです。

たとえば「走らないで!」という声かけは、子どもに「走ること」を強くイメージさせてしまいます。人間の脳は「〜しない」という否定の指示の前にある動作を先にイメージするため、「走らないで」と言われると、まず「走ること」を思い浮かべてしまいます。代わりに「歩こうね」「ゆっくり行こう」と言うことで、子どもがすべき行動をシンプルに伝えられます。

同様に「触らないで」より「手を後ろにしてね」、「騒がないで」より「静かな声で話そう」というように、やってほしい行動を具体的に伝えることで、子どもが何をすればよいかが分かりやすくなります。

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「どうしてできないの?」より「どうしたかったの?」

子どもが何かトラブルを起こしたとき、つい「どうしてそんなことしたの!」と問い詰めてしまいがちです。しかし、この聞き方では子どもは責められていると感じ、萎縮したり「分からない」と答えたりすることが多くなります。

代わりに「どうしたかったの?」「何が嫌だったの?」と、子どもの気持ちや意図を聞く問いかけに変えてみましょう。こうすることで、子ども自身が自分の感情や行動の理由を言語化する機会が生まれます。叱る前に「何がどうしてこうなったのか」を一緒に整理することで、子どもは自分の行動を振り返りやすくなります。

感情を受け止める声かけも効果的です。「悔しかったんだね」「びっくりしたんだね」と、子どもの気持ちをまず言葉にして返すことで、「自分の気持ちを分かってもらえた」という安心感が生まれます。その安心感が土台になって初めて、「でも次はこうしようね」というメッセージが届くようになります。

「評価」ではなく「事実」を伝えるほめ方

子どもをほめるとき、「すごいね!」「えらいね!」という言葉を使うことが多いと思います。しかし、こうした評価の言葉だけでは、子どもが何を評価されているのかが曖昧になることがあります。

より伝わるほめ方は、「何がどうよかったのか」を具体的に伝えることです。「一人でボタンが留められたね」「困っているお友達に声をかけてあげたね」「最後まであきらめずにやり遂げたね」。こうした事実ベースのほめ言葉は、子どもが自分の何がよかったのかを理解しやすく、次の行動にもつながりやすくなります。

また、「先生が見ていたよ」「気づいてたよ」という声かけも効果的です。自分の行動や努力を大人がちゃんと見ていてくれたと感じることが、子どもにとって大きな喜びになります。ほめることの本質は、「あなたのことをちゃんと見ている」というメッセージを届けることだとも言えます。

年齢・発達段階に合わせた声かけ

声かけの言葉は、子どもの年齢や発達段階によっても変える必要があります。

0〜2歳の乳幼児には、シンプルな言葉と穏やかなトーンが基本です。「おいしいね」「ねんねしようね」など、一度に一つのことを短く伝えることで、言葉が届きやすくなります。言葉以上に、表情・声のトーン・ゆっくりとした動きがコミュニケーションの主役です。

3〜4歳になると、理由を簡単に説明することが有効になってきます。「順番に使おうね、そうするとみんなが遊べるから」というように、「なぜそうするのか」を一言添えることで、子どもが納得して動きやすくなります。

5歳前後になると、子ども自身が考えて判断できる場面が増えてきます。「どうすればいいと思う?」「どっちがいいか、一緒に考えてみよう」という問いかけは、自主性や思考力を育てるうえで効果的です。指示するより問いかけることで、子どもが主体的に考えるプロセスを大切にできます。

声かけの「タイミング」も大切

何を言うかと同じくらい、いつ言うかも声かけの効果を左右します。

子どもが何かに夢中になっているとき、集中を突然切られると拒否反応が出やすくなります。そんなときは「あと少しで終わるよ」「もう一回やったら次ね」と予告することで、切り替えがしやすくなります。

また、注意や指摘は、子どもが落ち着いているときに行うのが基本です。感情が高ぶっているとき、疲れているとき、空腹なときは、言葉が入りにくい状態です。「今この子に伝えても届かないな」と感じたときは、少し時間を置いてから伝えることも選択肢のひとつです。

反対に、できた瞬間・頑張った瞬間のほめ言葉は、すぐに届けることが大切です。時間が経ってからのほめ言葉よりも、その場でかける「今この瞬間に気づいたよ」という言葉の方が、子どもの心により深く届きます。

声かけが特に難しい場面と対処法

子どもが言うことを聞かないとき 「何度言っても動いてくれない」という場面は、保育士が最も頭を悩ませるシチュエーションのひとつです。このとき、声を大きくしたり、繰り返し同じことを言い続けることはあまり効果がありません。

まず、子どもの目線の高さに合わせてしゃがみ、正面からアイコンタクトを取りながら話すことが基本です。上から大きな声で言われるより、近くで穏やかに話しかけられる方が、子どもには言葉が届きやすくなります。

また、「〜しなさい」という命令より「〜してくれると先生はとっても助かるな」という伝え方に変えると、子どもが自分の意志で動きやすくなることがあります。「やらされている」ではなく「自分がしてあげた」という感覚が、子どものやる気を引き出します。

子ども同士のトラブルの仲裁 子ども同士でおもちゃの取り合いやけんかが起きたとき、保育士がどちらかをすぐに叱ったり、結論を先に出したりすることは避けたいところです。「〇〇ちゃんが悪いよ」という裁定より、双方の気持ちをそれぞれ受け止めることが先です。

「〇〇ちゃんはどうしたかったの?」「△△くんはどんな気持ちだった?」と順番に聞き、両方の言い分を聞いたうえで「じゃあどうすればふたりとも楽しく遊べるかな」と一緒に考える流れが、子どもの社会性を育てる声かけの基本です。

声かけの質は「保育士自身の状態」にも左右される

どんなに言葉の選び方を意識していても、保育士自身が疲れていたり、余裕がなかったりすると、声かけのトーンや言葉は自然と変わってしまいます。「今日は怒りすぎてしまった」「なんであんな言い方をしてしまったんだろう」という後悔は、保育士の余裕のなさが声かけに出てしまったサインでもあります。

子どもへの声かけの質を保つためにも、保育士自身が心身を整えることは大切な「保育の一部」です。十分な睡眠、職場での同僚との良好なコミュニケーション、休憩が取れているかどうか。こうした自分の状態が、結果的に子どもへの声かけに反映されます。

「今日は余裕がない」と感じたときは、まず深呼吸を一つ。言葉が出る前に少しだけ間を置くことで、「今から何を言おうとしていたか」を意識できます。完璧な声かけができなかった日があっても、「次はこうしてみよう」と思い直せる気持ちの余裕を持ち続けることが、保育士として長く成長し続けるための大切な姿勢です。

まとめ

声かけの言葉ひとつで、子どもの反応は大きく変わります。否定より肯定、問い詰めるより気持ちを聞く、評価より事実を伝えるほめ方、発達段階に合わせた言葉の選択、そして適切なタイミング。これらを少しずつ意識して取り入れるだけで、子どもとのやり取りが変わっていきます。

声かけに正解はなく、同じ言葉でも子どもによって届き方が異なります。大切なのは、「この子に今何を伝えたいか」「この子はどう感じているか」を考えながら言葉を選ぶ姿勢を持ち続けることです。毎日の保育の中で少しずつ試し、うまくいった声かけを自分のレパートリーとして積み重ねていくことが、保育士としての声かけの力を育てていきます。完璧な声かけを目指すより、「今日は一つ試してみよう」という軽い気持ちで始めることが、成長への一番の近道です。

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この記事の監修者

監修者の写真

森 大輔(Mori Daisuke)

保育のせかい 代表

《資格》

保育士、幼稚園教諭、訪問介護員

《経歴》

2017年 保育のせかい 創業。2021年 幼保連携型認定こども園を開園するとともに、運営法人として、社会福祉法人の理事長に就任。その他 学校法人の理事・株式会社の取締役を兼任中。

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