七夕、プール開き、夏祭り、お泊まり保育……。夏は保育園にとって、行事が一気に集中する季節です。準備期間も本番も慌ただしく、職員一人ひとりの負担が大きくなりやすい時期でもあります。
「自分ばかり準備を抱えている気がする」「忙しさのあまり、ちょっとした言葉がきつくなってしまう」。そんな空気が漂いやすいのも、行事ラッシュの夏ならではの悩みです。普段は仲の良いチームでも、忙しさが続くと小さなすれ違いが積み重なり、気づけばどこかぎくしゃくした空気になっていた、ということもあるのではないでしょうか。
この記事では、忙しい時期だからこそ大切にしたい、保育士同士のチームワークを高めるための考え方や工夫をご紹介します。
Contents
なぜ夏はチームワークが乱れやすいのか
まず、夏という季節がチームワークにとってどんな特徴を持つのかを整理しておきましょう。
一つは、単純に業務量が増えることです。日常の保育に加えて、行事の制作物準備、衣装や装飾の手配、保護者向けのお便り作成などが重なります。やることが多いと、一人ひとりが目の前の作業に集中せざるを得なくなり、周囲に目を配る余裕が減っていきます。
もう一つは、体力的な消耗です。暑さの中での活動は、屋内での通常保育以上に体力を使います。疲れがたまると、ちょっとしたことでイライラしやすくなったり、普段なら気にならない一言が引っかかったりすることもあります。
さらに、行事の準備は担当が分かれることが多く、「誰が何をしているのか」が見えにくくなる点も見逃せません。全体像が共有されていないと、「自分ばかり大変な担当を任されている」という不公平感が生まれやすくなります。これらの要因が重なることで、普段は良好な人間関係でも、夏場だけギスギスしてしまう、ということが起こりやすいのです。
特に、年度の前半を駆け抜けてきた疲れが蓄積し始める時期でもあります。新年度から3〜4ヶ月が経ち、緊張感の糸が緩む一方で、夏の行事という新たな負荷が重なる。この「疲労の蓄積」と「業務の増加」が同時に起こることが、夏特有のチームの不安定さを生み出していると言えるでしょう。
「見える化」がチームワークを支える
行事の準備は、誰がどの作業をどこまで進めているのかが見えにくくなりがちです。これを防ぐためには、進捗や役割分担を「見える化」する工夫が効果的です。
ホワイトボードや共有のチェックリストに、担当者と進捗状況を書き出しておくだけでも、職員全体が今の状況を把握しやすくなります。「自分だけが大変だと思っていたけれど、他の人も同じくらい忙しいんだ」と気づけることも、不公平感を和らげる効果があります。
また、行事の準備を一人で抱え込まない仕組みづくりも大切です。装飾、衣装、進行台本、保護者対応など、作業を細かく分解してそれぞれに担当をつけることで、負担が一人に集中することを防げます。経験の浅い職員にも無理のない範囲で役割を持ってもらうことで、「自分もチームの一員として貢献できている」という実感を持ってもらいやすくなります。
たとえば「装飾班」「衣装班」「進行班」のようにグループを分け、各班でリーダーを決めておくと、責任の所在が明確になり、進め方に迷いが生じにくくなります。班ごとの作業時間を毎日少しずつ確保し、まとまった準備期間の直前に慌てて取り組むことを避けられれば、全体の負担感も和らぎます。
忙しいときほど、声をかけ合う
業務に追われていると、つい黙々と作業をこなすことに集中してしまいがちです。しかし、忙しいときこそ、ちょっとした声かけがチームの空気を保つ鍵になります。
「手伝おうか」「今、大丈夫?」という一言は、相手にとって大きな安心材料になります。特に新人や経験の浅い職員にとっては、忙しい先輩に話しかけるタイミングをつかみにくいことも多いものです。先輩や主任から積極的に声をかける文化があるだけで、職場全体の雰囲気は大きく変わります。
声かけは、必ずしも大げさなものである必要はありません。「今日も暑かったね」「もう少しで終わりだね、頑張ろう」といった何気ない一言も、相手の気持ちを和らげる効果があります。忙しい時期ほど会話が事務的になりがちですが、ほんの一言の雑談が、チームの空気を柔らかく保つ潤滑油になります。
また、「ありがとう」「助かったよ」という感謝の言葉も、忙しい時期ほど意識して伝えたいものです。当たり前のように見える日々の業務も、誰かの努力の積み重ねであることを忘れずにいたいですね。小さな感謝の積み重ねが、チーム全体の信頼関係を支えます。
休憩時間の確保も、チームの責任として
行事準備が忙しくなると、つい休憩を後回しにしてしまう保育士も少なくありません。しかし、休憩を取らずに働き続けることは、結果的にミスや体調不良につながり、チーム全体の負担を増やすことにもなりかねません。
休憩を「個人の頑張り」ではなく「チーム全体で確保するもの」として捉える視点が大切です。「お互いに休憩に行きやすいよう、声をかけ合う」「手が空いた人が積極的に他のクラスをフォローする」といった文化があるチームは、結果的に行事を乗り切る力も強くなります。
「自分が休むと誰かに迷惑がかかる」という気持ちは、多くの保育士が抱えるものです。しかし、無理を重ねた状態で行事本番を迎えることは、子どもの安全管理という点でもリスクになります。一人ひとりが万全のコンディションで行事に臨めるよう、休憩の確保はチーム全体の課題として捉えていきたいものです。
主任やリーダーの立場にある人は、忙しい時期だからこそ、率先して休憩を取る姿を見せることも大切です。「忙しいときに休んではいけない」という空気をつくらないことが、チーム全体の健全さを保つことにつながります。
振り返りの時間を持つ
行事が終わった後、忙しさのあまりそのまま次の準備に移ってしまうことも多いかもしれません。しかし、短時間でも振り返りの時間を持つことは、チームワークを長期的に高めるうえで効果的です。
「準備期間中、大変だったことは何だったか」「次回はどう改善できそうか」を共有することで、同じ苦労を繰り返さずに済みますし、職員同士で「あのときは大変だったね」と労い合う機会にもなります。振り返りの場では、うまくいかなかったことを責めるのではなく、次に活かす視点で話し合うことが大切です。
振り返りは、必ずしも長い時間をかけて行う必要はありません。行事の片付けが終わった後の数分間、お茶を飲みながら「今回、よかったところはどこだった?」と話し合うだけでも十分です。短い時間でも定期的に振り返る習慣があるチームは、行事を重ねるごとに準備のコツや連携の取り方が洗練されていきます。
また、行事を乗り越えたこと自体を、チームでしっかり認め合うことも忘れずにいたいものです。「みんなでよく頑張ったね」という一言が、次の行事に向けての士気にもつながります。
新人・若手保育士への配慮
夏の行事ラッシュは、経験の浅い保育士にとって特に負荷の大きい時期です。初めての行事準備でペースがつかめず、戸惑いを感じている新人もいるかもしれません。
先輩保育士は、「分からないことがあれば、いつでも聞いてね」という姿勢を日頃から示しておくことが大切です。忙しい時期は特に、新人が「今、質問していいタイミングだろうか」と遠慮してしまうことがあります。こちらから「困っていることはない?」と声をかける一言が、新人の安心感につながります。
初めての行事準備に取り組む新人にとっては、何をどこまで自分で進めてよいのか分からず、不安を抱えていることも多いものです。「ここまでできていれば十分」「分からなくなったらいつでも声をかけて」と、進め方の目安を具体的に伝えてあげることも、安心して取り組める環境づくりにつながります。
また、行事の役割分担を考える際は、経験年数に応じて無理のない範囲の担当を割り振ることも大切です。新人に過度な負担がかかると、燃え尽きてしまったり、行事そのものへの苦手意識を持ってしまったりすることもあります。チーム全体で支え合いながら、一人ひとりが成長できる環境を意識していきたいですね。
まとめ
行事ラッシュの夏は、業務量と体力消耗が重なり、チームの雰囲気がぎくしゃくしやすい時期です。だからこそ、進捗の見える化、こまめな声かけ、休憩の確保、振り返りの時間といった小さな工夫の積み重ねが、チームワークを支える力になります。
「大変な時期をどう乗り越えたか」は、その後の職場の信頼関係にも大きく影響します。一人で抱え込まず、お互いに支え合いながら、この夏の行事ラッシュを乗り越えていきましょう。
この記事の監修者

森 大輔(Mori Daisuke)
保育のせかい 代表
《資格》
保育士、幼稚園教諭、訪問介護員
《経歴》
2017年 保育のせかい 創業。2021年 幼保連携型認定こども園を開園するとともに、運営法人として、社会福祉法人の理事長に就任。その他 学校法人の理事・株式会社の取締役を兼任中。
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2026.07.02
2026.07.02




















