7月に向けて、プール準備、夏祭りや七夕の行事計画、保護者へのおたより作成……。保育士にとって夏は、子どもたちの笑顔が輝く季節である一方で、体力的にも精神的にも消耗しやすい時期でもあります。
「子どもたちは楽しそうにプールで遊んでいるのに、自分はクラクラする」「行事の準備と日常保育が重なって、休む間もなく過ぎていく」。そんな経験をしたことがある保育士さんは多いのではないでしょうか。
子どもたちの安全を守るためには、まず保育士自身が体調を万全に保つことが不可欠です。しかし現場では「子どもが優先だから、自分の体調は後回し」になりがちです。この記事では、保育士が夏に体調を崩しやすい理由と、忙しい毎日の中でも実践できるセルフケアの方法を具体的にご紹介します。
Contents
保育士の夏が体力的に過酷な理由
保育士の夏は、普段の業務に加えてさまざまな負荷が重なります。なぜこれほど体に堪える季節なのか、まず理由を整理しておきましょう。
プール活動は、保育士にとって特に体力を使う業務のひとつです。子どもたちを楽しそうに見えるプールでも、保育士はプールサイドに立ち、直射日光を浴びながら安全監視を続けます。水に浸かっていても汗はかきますし、プールサイドや地面の照り返しの熱は想像以上に強烈です。地上150cm基準で計測する気温と比べ、プールサイドの地面付近はさらに高温になることもあります。着替えの介助、シャワーの管理、子どもの体調確認、水質・水温のチェックなども重なり、プール活動の日は通常の保育よりも消耗が大きくなります。
夏の行事も体力を奪う要因です。七夕・夏祭り・盆踊りなど、7月から8月にかけては行事の準備が集中し、装飾・制作物の手配や保護者向けのお便り作成など、通常業務に上乗せされる仕事量が増えます。本番当日は炎天下や高温の室内で長時間動き続けることも多く、行事の後に「どっと疲れが出る」保育士は少なくありません。
さらに、熱帯夜が続く夏は睡眠の質が下がりやすく、寝不足や慢性的な疲労が積み重なりやすい時期でもあります。冷たい飲み物や食事が続くことで胃腸が弱り、食欲低下から栄養不足になるという悪循環も起こりやすくなります。
保育士自身が気をつけたい熱中症のサイン
子どもの熱中症には細心の注意を払う保育士でも、自分自身の体調変化には気づきにくいものです。業務中は子どもの安全管理に意識が向いており、自分の体のサインを後回しにしてしまいがちです。
熱中症の初期サインとして意識しておきたいのは、めまいや立ちくらみ、頭痛、体のだるさ、筋肉のこむら返りなどです。「なんとなく頭が重い」「少し気分が悪い」と感じた段階でこそ、早めに対処することが大切です。喉が渇いたと感じたときにはすでに脱水が始まっている可能性があるため、渇きを感じる前にこまめに水分を補給することが基本です。
水分補給の際は、水だけでなく塩分も意識しましょう。大量に汗をかいた際に水だけを大量に飲むと、体内の電解質バランスが崩れることがあります。経口補水液やスポーツドリンク、梅干しや塩飴などを活用しながら、水と塩分を一緒に補給することが効果的です。
自分の体調に不安を感じたときは、同僚に声をかけて休む勇気を持つことも重要です。熱中症は早期対応が重症化を防ぐ最大の手段です。保育士が倒れてしまっては、子どもたちの安全を守ることができません。「自分が休むと迷惑をかける」と我慢してしまいがちですが、チームで声をかけ合い、無理をしない文化を職場全体でつくっていくことが大切です。
なお、環境省が公開している「熱中症予防情報サイト」では、地域ごとの暑さ指数(WBGT)をリアルタイムで確認できます。暑さ指数が28を超えると「厳重警戒」、31を超えると「危険」レベルとされており、こうした指標を参考にしながら活動内容や屋外での時間を調整することも、保育士自身を守る判断材料になります。
勤務前・勤務中にできる体調管理
忙しい夏の保育の中でも、日々の積み重ねでできる体調管理があります。
勤務前に意識したいのは、起床後の水分補給です。睡眠中も汗をかいているため、朝起きたら白湯や常温の水をコップ1杯飲む習慣をつけると、その日1日の体調管理がしやすくなります。また、朝食は抜かずにしっかり食べることが、体温調節や集中力の維持につながります。特にビタミンB1(豚肉・豆類・玄米など)は疲労回復に関わる栄養素として知られており、意識的に取り入れると夏バテの予防に役立ちます。
勤務中は、子どもたちへの声かけを自分への合図にする方法が現場でよく使われています。「お水飲もうね」と子どもたちを飲水タイムに誘うとき、保育士自身も一緒に水分を補給する習慣をつけると、補給のタイミングを忘れにくくなります。また、帽子や日よけ素材のラッシュガードなど、熱を遮る服装を取り入れることも、体温上昇を抑えるうえで効果的です。ラッシュガードはそのまま水に入れるため、プール活動時の日焼けや熱射病対策としても重宝します。プールサイドで動きやすい滑り止め付きのサンダルを選ぶことも、安全面と体への負担軽減につながります。
プール活動後・帰宅後のリカバリー
プール活動は、楽しそうな雰囲気とは裏腹に、保育士の体力を大きく奪います。活動後は子どもの昼寝の時間を利用して、保育士自身も体を休める時間を確保することが大切です。エアコンの効いた室内でゆっくりと体を冷やし、必要であれば追加の水分補給を行いましょう。
帰宅後は、ぬるめのお湯(38〜40℃程度)にゆっくり浸かることで、筋肉の疲労をほぐしながら自律神経を整える効果が期待できます。シャワーのみで済ませると体が完全に温まらないまま就寝することになり、睡眠の質が下がりやすくなります。入浴後は早めに就寝し、7〜8時間を目安に睡眠時間を確保することが、翌日の体調に直結します。
冷たいものを取りすぎることで胃腸が冷え、消化機能が低下するのも夏に多いパターンです。夏野菜(トマト・きゅうり・オクラなど)や温かいスープを意識的に取り入れ、胃腸に優しい食事を心がけることも夏バテ予防の基本です。
夏バテを防ぐ食事と生活リズム
夏バテとは、暑さによる体力消耗・睡眠不足・食欲低下が連鎖することで体の機能が低下した状態です。保育士のように体を動かす仕事では、消費するエネルギーが多いぶん、夏バテの影響を受けやすくなります。
食事では、冷たいものの取りすぎに注意が必要です。暑さのあまりそうめんやアイス、冷たい飲み物だけで食事を済ませてしまうと、胃腸が冷えて消化機能が低下し、さらに食欲が落ちるという悪循環に陥ります。夏野菜(トマト・きゅうり・オクラ・ゴーヤなど)や温かいスープ、発酵食品(味噌・納豆・ヨーグルトなど)を意識的に取り入れながら、胃腸を温める食事を心がけましょう。
睡眠については、熱帯夜が続く夏は室温・湿度の管理が鍵です。エアコンを使う場合は、直接体に風が当たらないよう調整し、タイマー機能を活用して朝方の冷えすぎを防ぎましょう。寝る前のスマートフォン使用を控え、ぬるめのお湯での入浴で体を温めてから眠ることで、寝つきが改善しやすくなります。
また、暑さで体を動かすのが億劫になりがちですが、涼しい時間帯に軽い運動やストレッチを取り入れることも夏バテ予防に効果的です。汗をかかない生活が続くと汗腺の機能が低下し、かえって体温調節がしにくくなるため、適度に体を動かして発汗する習慣を維持することが大切です。
心の疲れも見落とさないで
夏は体だけでなく、心の疲れも出やすい時期です。プール活動中の安全管理への緊張感、行事の準備や保護者対応のプレッシャー、連日続く暑さによる倦怠感が重なり、気分の落ち込みや焦りを感じやすくなることがあります。
「少し休みたい」「疲れたな」という気持ちは、体のSOSと同じように、心からの大切なシグナルです。信頼できる同僚に話すこと、休みの日に自分の好きなことをする時間をつくること、睡眠と栄養をしっかり確保することが、心の疲れを溜めないための基本になります。
疲れは夏の終わりに一気に出ることも多く、9月以降に体調を崩す保育士も少なくありません。夏の間に無理をしすぎず、こまめに体と心を休める習慣をつけておくことが、長く保育士として働き続けるための土台にもなります。
まとめ
子どもたちの夏を安全に楽しいものにするためには、保育士自身の体調管理が欠かせません。水分・塩分補給、睡眠の確保、栄養バランスの意識、適度な運動と休息。どれも「当たり前」に聞こえるかもしれませんが、忙しい保育の現場では後回しになりがちなことばかりです。
「子どものために頑張る」という気持ちはとても大切ですが、体調を崩してしまっては元も子もありません。保育士自身が心身ともに安定した状態でいることが、子どもたちにとっても安心できる保育環境につながります。
まず自分の体を大切にすること、それが子どもたちの安全を守ることにもつながります。この夏も、無理せず、でも充実した保育ができるよう、今のうちからセルフケアの習慣を整えておきましょう。
この記事の監修者

森 大輔(Mori Daisuke)
保育のせかい 代表
《資格》
保育士、幼稚園教諭、訪問介護員
《経歴》
2017年 保育のせかい 創業。2021年 幼保連携型認定こども園を開園するとともに、運営法人として、社会福祉法人の理事長に就任。その他 学校法人の理事・株式会社の取締役を兼任中。
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2026.06.25
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