「次の4月には新しい職場で働き始めたい」「今の園に限界を感じている」。そんな気持ちを抱えながら、「でもいつから動けばいいのか分からない」と感じている保育士さんは多いのではないでしょうか。
実は、保育士の転職市場には明確な「旬の時期」があります。求人が増え始めるのは10月ごろからで、1〜2月にピークを迎えます。つまり、10月に転職活動を本格スタートさせるためには、8〜9月のうちに準備を整えておくことが、良い求人を逃さない最大のポイントになります。
「まだ夏だから大丈夫」と思っているうちに、気に入った求人を他の人に先越されてしまった——。そんな後悔をしないために、今の時期から動き始めることをおすすめします。この記事では、秋の転職を成功させるために8月から始めておきたい準備を、具体的なステップとともにご紹介します。
なぜ保育士の転職は「秋から動く」のが有利なのか
保育士の転職タイミングとして最も多いのは「4月入職」です。新年度に合わせて新しい職場でスタートできるため、子どもや保護者との信頼関係を最初から築きやすく、職場への馴染みやすさという点でも理想的なタイミングとされています。
この4月入職を目指すためには、逆算すると転職活動は秋から動き始める必要があります。保育士の求人数は毎年10月から少しずつ増え始め、1〜2月にピークを迎える傾向があります。また、多くの保育園では10月頃に次年度のクラス編成などについて面談が行われるため、そのタイミングで退職の意思を伝える保育士が多く、4月入職を目指す保育士が動き出すのも9月頃と言われています。
つまり、ライバルとなる転職希望者も9月ごろから一斉に動き始めるということです。人気の園や条件の良い求人は早期に埋まってしまうことも多く、「10月になったら動こう」と思っていると、すでに選択肢が狭まっている可能性があります。8月のうちから準備を進めることが、転職を成功させるための大きなアドバンテージになります。
ステップ1:自分の「転職の軸」を明確にする
転職活動の準備として最初にすべきことは、求人サイトへの登録でも履歴書の作成でもありません。「自分は何のために転職するのか」「次の職場に何を求めるのか」を明確にすることです。
この「転職の軸」がはっきりしていないまま転職活動を始めると、求人の多さに迷って決めきれなかったり、条件だけで選んでまた後悔したりすることになります。
転職の軸を考えるうえで整理したいのは、次のような問いです。今の職場で「これが嫌だ」と感じていることは何か。それは環境を変えれば解決するものか、どこでも起こり得ることか。次の職場に絶対に求める条件(給与・通勤・休日・施設形態など)は何か。逆に、多少妥協できる条件は何か。どんな保育をしたいか、どんな子どもたちと関わりたいか。
これらを書き出してみると、「自分は本当は何が嫌で、何を求めているのか」が整理されてきます。転職の軸を持つことで、求人を見たときに「自分に合うかどうか」を素早く判断できるようになります。
ステップ2:情報収集と求人サイト登録を始める
転職の軸が見えてきたら、次は情報収集のフェーズです。保育士向けの求人サイトや転職エージェントへの登録は、早ければ早いほど有利です。
転職エージェントを利用する場合、8月の段階で登録・相談しておくと、「今の時期はどんな求人が出ているか」「どのタイミングで本格的に応募するのがよいか」という市場の動向をつかみやすくなります。エージェントは転職の相談だけでも無料で使えるため、「まだ転職するかどうか決めていない」という段階でも気軽に活用してみてください。
ステップ3:書類の準備を進めておく
転職活動が本格化する秋以降、「この求人に応募したい」と思ったときに履歴書や職務経歴書がすぐに準備できている状態であることが、スピード感のある行動につながります。
履歴書は、志望動機以外の基本情報をなるべく早く整えておきましょう。職歴・資格・学歴の整理は時間がかかることがあります。特に複数の職場を経験している場合は、在職期間や業務内容を正確に確認しておく必要があります。
職務経歴書は、保育士の転職で必須ではない場合もありますが、準備しておくと自己PRがしやすくなります。これまで担当したクラスの年齢・人数、特に力を入れてきた保育の取り組み、担当業務、受講した研修などをまとめておくと、面接でも話しやすくなります。
ステップ4:退職の意思表示のタイミングを考えておく
転職活動の準備を進める際に、並行して意識しておきたいのが「今の園への退職の申し出」のタイミングです。
保育士の場合、退職希望日の3か月前、少なくとも2か月前には申し出ることが望ましいとされています。4月末退職・5月1日入職を目指すなら、12月〜1月には退職の意思を伝える必要があります。そこから逆算すると、転職先が内定するタイミングを10〜11月ごろに設定すると、スムーズな流れになります。
また、多くの保育園では9月〜10月頃に次年度のクラス編成などについて面談が行われます。この面談は、退職の意思を伝える自然なタイミングでもあります。「次年度のクラスはどうしますか」と聞かれる前に、自分の中で方向性を決めておくと、面談の場でも落ち着いて話せます。
ステップ5:園見学の希望リストをつくる
転職活動において「園見学」は非常に重要なプロセスです。求人票の情報だけでは分からない、職員の雰囲気・保育環境・子どもたちの様子を直接確認できる機会です。
8月のうちから「気になる園」のリストアップを始めておきましょう。通勤圏内で候補となりそうな園の情報をホームページや口コミサイトで調べ、「ここなら見学に行ってみたい」と感じる園を3〜5園程度ピックアップしておくといいでしょう。
見学の際に確認したいのは、子どもへの声かけの様子、職員同士のコミュニケーション、保育室の環境や雰囲気、ICT化の状況、残業や持ち帰り仕事の実態などです。求人票の「アットホームな職場」「残業ほぼなし」といった言葉だけでなく、実際の様子を自分の目で確かめることが、入職後のミスマッチを防ぐことにつながります。
在職中でも転職活動は進められる
「今の仕事が忙しくて転職活動の時間が取れない」という悩みを持つ保育士さんも多いです。しかし、転職活動のほとんどは在職中に進めることができます。
求人情報の確認や転職エージェントへの相談は、スマートフォンがあれば通勤中や休憩時間に進められます。履歴書の作成は、週末に少しずつ取り組めば1〜2週間で仕上げることができます。
注意したいのは、転職活動を進めていることを職場の同僚に話すタイミングです。退職の意思を正式に伝える前に広まってしまうと、職場の雰囲気が悪くなったり、引き止めや圧力がかかる原因になることがあります。転職が正式に決まるまでは、職場内でのやり取りは慎重に進めましょう。
また、面接の日程は「有給休暇を使う」「平日の退勤後に設定してもらう」など、現在の職場の業務に支障が出ないよう調整することが基本です。多くの園では面接の時間調整に柔軟に対応してくれるため、「在職中だから面接に行けない」と諦める必要はありません。
転職活動をしながら「今の職場での仕事も大切にする」
転職活動を始めると、今の職場への気持ちが薄れてしまうことがあります。しかし、正式に退職が決まるまでは、今の職場で誠実に働き続けることがとても重要です。
保育業界は横のつながりが強く、前の職場での評判が新しい職場にも伝わることがあります。引き継ぎを丁寧にすること、最終日まで子どもたちや同僚に誠実に向き合うことは、自分のキャリアを守ることにもつながります。
「もうすぐ辞めるから」と気持ちを抜いてしまわず、「今の職場で学べることをすべて学んでから次に進む」という姿勢が、転職後の自分自身の成長にもつながっていきます。
まとめ
保育士の秋の転職を成功させるカギは、「10月に動き始めること」ではなく「8月から準備を整えておくこと」にあります。転職の軸を明確にし、情報収集を始め、書類を準備し、退職のタイミングを考え、気になる園をリストアップしておく。この5つのステップを今のうちから少しずつ進めておくことで、転職活動が本格化する秋以降に焦らず動けるようになります。
「まだ先のこと」と思って動かずにいると、気に入った求人を逃したり、準備不足のまま急いで決めてしまうことになりがちです。転職は人生の大きな決断ですが、じっくり準備できるかどうかが結果を大きく左右します。「今の自分にとってのベストな転職先」を見つけるためにも、後悔のない転職のために、今この時期から一歩踏み出してみましょう。
この記事の監修者

森 大輔(Mori Daisuke)
保育のせかい 代表
《資格》
保育士、幼稚園教諭、訪問介護員
《経歴》
2017年 保育のせかい 創業。2021年 幼保連携型認定こども園を開園するとともに、運営法人として、社会福祉法人の理事長に就任。その他 学校法人の理事・株式会社の取締役を兼任中。
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