転職先を選ぶとき、「求人票に書いてあることは本当なのだろうか」「実際の雰囲気はどうなのか」と不安を感じる保育士さんは多いと思います。保育士の転職でよく聞かれる後悔のひとつが、「入ってみたら求人票と全然違った」というものです。
残業がほぼないと書いてあったのに、毎日持ち帰り仕事がある。アットホームな職場と書いてあったのに、職員間の雰囲気が悪い。給与額を見て決めたのに、基本給が低く手当だらけで実態が違った。こうしたミスマッチを防ぐためには、求人票の情報を鵜呑みにせず、見学や面接を通じて自分の目と耳で確認することが欠かせません。
この記事では、「いい園かどうか」を見極めるうえで園見学・面接の場で確認しておきたい5つのポイントを、具体的な質問例とあわせてご紹介します。
面接の「逆質問」を活用して本音を引き出す
面接の終盤に「何かご質問はありますか」と聞かれる場面があります。この逆質問の時間は、「いい園かどうか」を確認するための貴重な機会です。「特にありません」と答えてしまうのはもったいないです。
ただし、逆質問の内容も大切です。給与や休日などの待遇面ばかり聞くのは「条件だけで選んでいる」という印象を与えやすいため、保育の内容や職場環境に関する質問を中心にすることをおすすめします。
たとえば「職員の方が特にやりがいを感じている場面はどんなときですか」「入職後に一番戸惑いやすいことはどんなことですか」という質問は、職場の実態を自然に引き出しつつ、あなたの前向きな姿勢も伝えられます。「職員同士で悩みを相談し合える雰囲気はありますか」という質問も、人間関係の風通しを測るうえで効果的です。
また、「ここ1〜2年で変わったことや、新しく取り組んでいることはありますか」という質問も有効です。前向きな変化があれば、園が改善や成長に積極的なことが分かります。一方で「特に何も変わっていない」という答えなら、変化への対応力や柔軟性という点で参考になります。
見極めポイント① 職員の表情と雰囲気
園見学の際に最も大切にしたいのが、働いている職員の様子を直接見ることです。求人票にいくら良いことが書かれていても、実際に働いている職員が生き生きしているかどうかは、職場の実態を映す最も正直な指標のひとつです。
見学中に注目したいのは、職員同士の会話の自然さです。廊下ですれ違ったとき、ちょっとした声かけや笑顔が交わされているか。反対に、職員同士が無表情で黙々と動いているだけの空間は、風通しの良くない職場環境を示しているかもしれません。
また、見学に案内してくれる担当者の様子も参考になります。「質問はありますか」と促してくれるか、こちらの質問に丁寧に答えてくれるか、良い点も課題も正直に話してくれるかどうかは、その園の誠実さを測るバロメーターになります。案内役が「うちの園は本当にいい職場です」とよい点だけを並べ、課題については曖昧にするような場合は、少し注意が必要です。
子どもたちの様子も大切な情報源です。子どもたちが伸び伸びと活動しているか、担当保育士との関わりが自然かどうかを観察してみましょう。保育士と子どもたちの間に、穏やかで信頼のある空気が流れている園は、職場の土台が安定していることが多いと言われています。
見極めポイント② 離職率と職員の定着状況
「いい園かどうか」を判断するうえで、離職率は非常に重要な指標です。ただし、求人票には離職率が記載されていないことがほとんどです。見学や面接の場で、さりげなく確認してみましょう。
確認しやすい聞き方として、「長く勤めている職員の方はどのくらいいらっしゃいますか」「平均的な在籍年数はどのくらいですか」という質問があります。「5年以上いる職員が多い」「園長が長く同じ方が続けている」という答えが返ってくる園は、職場環境が安定している可能性が高いと言えます。
反対に、「最近入った方が多い」「人の入れ替わりが多い」という状況が続いている場合は、定着しにくい何らかの理由がある可能性があります。転職エージェントを利用している場合は、担当アドバイザーに「この園の離職状況はどうか」と率直に聞いてみることも有効です。エージェントは多くの園の情報を持っているため、公開されていない実態を教えてもらえることがあります。
見極めポイント③ 残業・持ち帰り業務の実態
「残業ほぼなし」「持ち帰り仕事なし」。求人票によく見られるこれらの記載が、実態と合っているかどうかを確認することは、入職後のギャップを防ぐうえで非常に重要です。
見学や面接の場でストレートに「実際の残業時間はどのくらいですか」と聞くことをおすすめします。具体的な時間で答えてくれる園は、実態を隠さずに開示してくれている証でもあります。一方で「ほとんどありません」と曖昧に答えるだけの場合は、もう少し掘り下げて聞いてみましょう。「書類業務は勤務時間内に終わりますか」「持ち帰り仕事はどの程度発生しますか」と聞き方を変えると、具体的な状況が浮かびやすくなります。
また、ICTシステムの導入状況も残業実態と関係しています。「どのような業務管理システムを使っていますか」と聞くことで、書類業務の効率化がどれくらい進んでいるかが分かります。デジタル化が進んでいる園は、事務作業の負担が少ない可能性が高く、働きやすさの一つの指標になります。
見極めポイント④ 給与・待遇の実態を数字で確認する
求人票に記載されている「月給◯万円〜」「賞与年2回・計◯か月分」といった数字は、実態と異なるケースがあります。転職後に「思ったより給料が低かった」という後悔をしないためにも、待遇の詳細は必ず確認しておきましょう。
特に気をつけたいのは、月給の内訳です。「基本給」と「各種手当の合計」が混在して月給として表示されている場合、基本給自体は低く設定されていることがあります。ボーナスは基本給をベースに計算されることが多いため、基本給が低いとボーナスも少なくなります。面接の場で「基本給はいくらですか」「処遇改善加算はどのように支給されていますか」と確認することをおすすめします。
また、交通費の支給上限、有給休暇の実際の取得日数、育児休業の取得実績(男女別)なども、長く働くうえで重要な情報です。「制度として存在する」ことと「実際に使われている」ことは異なります。「育休を取得した職員はいますか」「有給は年間どのくらい取れていますか」と具体的に聞くことで、制度の実態が見えてきます。
見極めポイント⑤ 保育方針と自分の価値観の一致
「条件は良さそうなのに、なんとなく合わない気がする」という感覚が就職後に現れることがあります。それは多くの場合、園の保育方針や大切にしていることと、自分の価値観がズレているサインです。
面接や見学の場で「この園が最も大切にしていることは何ですか」「保育のなかで特に力を入れていることはどんな点ですか」と聞いてみましょう。その答えに自分が共感できるかどうか、「この考え方の園で働きたい」と思えるかどうかが、入職後の充実感に大きく影響します。
逆に、面接で「あなたが大切にしている保育は何ですか」「どんな保育士を目指していますか」と聞かれた場合も、自分の保育観を正直に伝えることが重要です。自分をよく見せようとして園の求める答えを探すより、自分の言葉で話すことで「自分と合う園かどうか」の相互確認ができます。見学や面接は、園があなたを選ぶ場であると同時に、あなたが園を選ぶ場でもあります。
求人票だけで決めない、「直感」も大切にする
最後に伝えたいのは、「直感を大切にする」ということです。見学に行ってみて「なんとなく合わない気がした」「廊下の雰囲気が重かった」という感覚は、多くの場合、何かを察知しているサインです。条件が良くても、見学中に感じた違和感は簡単に消えないことがあります。
一方で、「なんかいいな」「ここで働いてみたい」と感じた園は、自分との相性が良い可能性が高いです。転職の判断は、数字やスペックだけでなく、自分の感覚も含めて総合的に行うことが大切です。
複数の園を見学・比較することで、「良い園とそうでない園の違い」が自分の中で明確になっていきます。一つの園しか見ていないと比較軸がないため判断が難しくなるため、できれば3〜5園を見学してから決めることをおすすめします。
まとめ
転職先の「いい園」を見極めるためには、求人票だけに頼らず、見学・面接の場で自分の目と耳で確認することが不可欠です。職員の表情と雰囲気、離職率と定着状況、残業の実態、給与の内訳と待遇、そして保育方針との価値観の一致。この5つを意識しながら情報を集めることで、入職後のミスマッチを大きく減らすことができます。
「ここで働いてみたい」と感じるかどうかの直感も、大切な判断材料のひとつです。求人票の数字やスペックだけでなく、見学・面接を通じて自分が感じた空気感も含めて総合的に判断しましょう。転職は一度きりではなく、納得できる環境を見つけるまで粘り強く探すことが大切です。自分に合った園と出会えるまで、焦らず丁寧に選んでいきましょう。
この記事の監修者

森 大輔(Mori Daisuke)
保育のせかい 代表
《資格》
保育士、幼稚園教諭、訪問介護員
《経歴》
2017年 保育のせかい 創業。2021年 幼保連携型認定こども園を開園するとともに、運営法人として、社会福祉法人の理事長に就任。その他 学校法人の理事・株式会社の取締役を兼任中。
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2026.07.20
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