秋から冬にかけては、個人面談を予定している園も多い時期です。普段の送迎では短い会話しかできない保護者と、じっくり向き合える貴重な機会である一方、「何を話せばいいのか分からない」「保護者の反応が不安」と、緊張を感じる保育士も少なくありません。
特に経験の浅い保育士にとっては、面談は気が重くなる業務の一つかもしれません。しかし、少しの準備と心構えがあれば、面談は保護者との信頼関係を深める時間に変えていくことができます。今回は、個人面談を保護者にとって「話しやすい時間」にするための準備や伝え方について整理してみたいと思います。
個人面談の目的を改めて考える
個人面談というと、「子どもの様子を報告する場」というイメージが強いかもしれません。しかし、本来の目的は、保育士と保護者が子どもの育ちを共有し、お互いの理解を深めることにあります。
保育士から一方的に報告するのではなく、保護者の思いや家庭での様子を聞く時間でもあります。保護者が普段の送迎では話しにくいことを話せる場にすることで、子どもを真ん中にした信頼関係が築かれていきます。
この目的を意識しておくと、「うまく話さなければ」という緊張が和らぎ、「保護者と一緒に子どもの成長を見つめる時間」として臨みやすくなります。
面談の前にしておきたい準備
面談を落ち着いて進めるためには、事前の準備が大切です。
まず、子どもの普段の様子を振り返ることです。遊びの様子、友達との関わり、生活面での姿、最近できるようになったことなど、日頃の記録やメモを見返しながら、具体的なエピソードを整理しておきます。
エピソードを選ぶときは、成長や頑張りが伝わる場面を中心に考えましょう。「最近、友達の名前を呼びながら遊んでいました」「自分で靴を履こうと挑戦していました」といった具体的な姿は、保護者にとっても子どもの成長を実感しやすい情報になります。
次に、気になる点がある場合の伝え方も、事前に整理しておきます。課題や心配な点を伝える際には、事実とあわせて、園での関わりや今後の見通しも添えられるよう考えておくと、保護者も受け止めやすくなります。
また、園内の他の職員と、子どもの様子について共有しておくことも大切です。担任だけでなく、他の保育士や主任の視点を取り入れることで、より多角的な情報を保護者に伝えられます。
話しやすい雰囲気をつくる工夫
保護者が安心して話せるようにするためには、面談の雰囲気づくりが大きな役割を果たします。
まず、挨拶や表情を意識して、保護者を迎えます。忙しい中、時間をつくって来てくれたことへの感謝を伝えるだけでも、場の空気はやわらぎます。
座る位置にも配慮が必要です。向かい合って座ると、対立的な雰囲気になりやすいため、斜めに座る、あるいは机を挟まずに座るといった工夫をすると、リラックスした空気が生まれます。
話し始めは、子どもの良い姿や成長から入るのがおすすめです。「最近、こんなことができるようになりました」というポジティブな話題から入ることで、保護者も安心して話を聞くことができます。
保護者の話を聴く姿勢
個人面談で大切なのは、保育士が話すことだけではなく、保護者の話をしっかり聴くことです。
「ご家庭ではどんな様子ですか」「何か気になっていることはありますか」といった開かれた質問を投げかけ、保護者の言葉を待つ姿勢を持ちましょう。保護者が話しているときは、うなずきや相づちで、話を受け止めていることを伝えます。
保護者の話の中には、育児の不安や悩みが含まれていることもあります。その際は、すぐに解決策を提示しようとせず、まず「そうなんですね」「心配ですよね」と気持ちを受け止める姿勢が大切です。
保育士としての意見やアドバイスを求められた場合も、断定的な言い方は避け、「園ではこんな様子ですよ」「一緒に見ていきましょう」と、共に考える姿勢で伝えると、保護者も受け入れやすくなります。
気になる点を伝えるときの工夫
子どもの課題や気になる点を保護者に伝える場面は、保育士にとって最も緊張する瞬間の一つかもしれません。
伝える際は、できるだけ具体的な場面を挙げながら、事実を伝えるようにします。「落ち着きがない」「乱暴」といった抽象的な表現や、評価的な言い方は避け、「活動の切り替えのときに、気持ちが向かいにくい場面がありました」というように、状況を丁寧に説明します。
そのうえで、園での関わり方や、子どもの良い面にも触れることが大切です。課題だけを伝えると、保護者は不安や責められている感覚を抱きやすくなります。「こんな工夫をしたらうまくいった場面もありました」と、前向きな情報を添えることで、一緒に考えていく姿勢が伝わります。
また、診断や専門的な判断につながるようなことを、保育士が断定的に伝えることは避けたいところです。気になる点がある場合は、園内で相談し、適切な伝え方を検討したうえで、保護者に共有する流れを大切にしてください。
保護者のタイプに合わせた関わり方
保護者の性格や状況はさまざまです。話し好きな方もいれば、口数が少ない方もいます。
よく話す保護者には、話をじっくり聴きながら、時間配分を意識する工夫が必要です。話が長くなりすぎる場合は、「ありがとうございます。続きは、また別の機会にもお話ししましょう」と、やわらかく切り上げる方法もあります。
口数の少ない保護者には、質問を具体的にすると話しやすくなります。「最近、お家で好きな遊びは何ですか」「朝の準備はどんな様子ですか」といった、答えやすい問いかけから始めてみましょう。
また、育児に自信を持てずにいる保護者には、日々の頑張りを認める言葉を意識的に伝えます。「毎日、送り迎えをありがとうございます」「お家でもよく関わってくださっていますね」といった一言が、保護者の安心につながります。
面談のあとのフォロー
面談は、終わった後の関わりも大切です。面談で聞いた内容や話したことを、その後の保育にどう活かすかを意識して振り返ります。
保護者から相談された内容があれば、園内で共有し、必要に応じて関わり方を考えていきます。「あのとき話していただいた件ですが、園ではこんな様子でした」と、後日の送迎時などにさりげなく伝えることで、保護者は「ちゃんと聞いてもらえた」と感じられます。
また、面談の内容を記録として残しておくことも、後々の関わりに役立ちます。記録の取り方や共有の仕方は園の方針に従いながら、保護者との信頼関係を継続的に築くための材料として活用していきましょう。
面談に苦手意識がある保育士へ
面談に苦手意識があるのは、決して珍しいことではありません。「うまく話せないのでは」「保護者に批判されたらどうしよう」と不安になるのは、それだけ子どもや保護者に誠実に向き合おうとしている証でもあります。
経験を重ねるうちに、少しずつ要領はつかめてきます。先輩保育士の面談の進め方を聞いてみたり、可能であればロールプレイで練習したりするのも、一つの方法です。
また、完璧を目指す必要はありません。うまく話せなかった場面があっても、保護者は「子どものことを一生懸命見てくれている」という姿勢をきちんと感じ取っています。誠実に向き合う姿勢が、何より信頼につながります。
まとめ
個人面談は、保護者と子どもの育ちを共有し、信頼関係を深める大切な機会です。事前に子どもの具体的なエピソードを整理し、話しやすい雰囲気をつくることで、保護者も安心して話せる時間になります。
保育士が話すだけでなく、保護者の思いに耳を傾ける姿勢が大切です。気になる点を伝えるときも、事実を丁寧に伝えつつ、前向きな情報を添えて、共に考えていく姿勢を持つことが信頼につながります。
面談に苦手意識があっても、完璧を目指す必要はありません。子どもを真ん中に、誠実に向き合う姿勢を大切にしながら、保護者との関係を少しずつ築いていってください。
この記事の監修者

森 大輔(Mori Daisuke)
保育のせかい 代表
《資格》
保育士、幼稚園教諭、訪問介護員
《経歴》
2017年 保育のせかい 創業。2021年 幼保連携型認定こども園を開園するとともに、運営法人として、社会福祉法人の理事長に就任。その他 学校法人の理事・株式会社の取締役を兼任中。
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2026.10.14
2026.10.16





















