空気が乾燥し始める10月下旬から冬にかけて、「手がカサカサする」「指先が割れて痛い」といった悩みを抱える保育士は少なくありません。一日に何度も手を洗い、消毒を行う保育の現場では、手元への負担が積み重なりやすいものです。
今回は、保育士が手荒れや肌荒れを起こしやすい理由を整理しながら、日々の生活のなかで無理なく続けられるセルフケアの考え方について考えてみたいと思います。
手洗い・消毒が増える保育士の手元事情
保育の現場では、登園後の手洗い、食事の前後、排泄の介助、おむつ替え、外遊びの後など、一日のなかで手を洗う場面が数え切れないほどあります。感染症への意識が高まった近年は、アルコール消毒を取り入れる園も増え、手元への刺激はさらに増えているといえるでしょう。
こうした習慣は、子どもたちの健康を守るために欠かせないものです。しかし、その分、保育士自身の手は水や洗浄成分、消毒液にさらされる時間が長くなり、本来肌が持っている潤いを保つ力が失われやすくなります。
さらに、冬場は気温の低下と空気の乾燥が重なるため、夏場には問題がなかった人でも、急に手荒れが目立つようになることがあります。「毎年この時期になるとつらい」と感じている人も、決して珍しくありません。
手荒れが起きやすい理由
手荒れが起きやすくなる背景には、いくつかの要因が重なっています。一つは、手洗いの回数が多いことによる皮脂の減少です。手の表面は、皮脂と水分のバランスによって保護されていますが、洗う回数が増えるほど、この保護膜が落ちやすくなります。
また、消毒液に含まれる成分が、肌にとって刺激になる場合もあります。特に、すでに少し荒れている状態で使用を続けると、しみたり痛みを感じたりして、症状が悪化しやすくなることもあります。
もう一つの要因として、乾燥した空気や冷たい水にさらされることも挙げられます。園庭遊びで冷たい風にさらされたり、水遊びや片付けで冷たい水に触れたりする機会が多い保育士は、手元への環境的な負担も受けやすい立場にあるといえます。
さらに、疲れや睡眠不足、栄養の偏りなど、体全体のコンディションも肌の状態に影響を与えます。忙しい時期ほど手荒れが悪化しやすいと感じる人もいるのではないでしょうか。
日常でできる保湿・ケアの工夫
手荒れとの付き合い方の基本は、「こまめな保湿」と「刺激を減らす工夫」の二つです。まず保湿については、手を洗った後の水分をしっかりと拭き取り、できるだけ早いタイミングでハンドクリームなどを塗る習慣を持つことが役立ちます。
とはいえ、保育中は何度も手を洗うため、そのたびに保湿するのは現実的ではありません。そのため、時間に余裕のある休憩時間や、午睡の時間帯、帰宅後の入浴後など、ケアしやすいタイミングを自分なりに決めておくと続けやすくなります。
就寝前のケアも効果的な時間帯です。たっぷりと保湿剤を塗った後に、綿の手袋をして眠るという方法を取り入れている人もいます。睡眠中は手を使わないため、保湿成分が肌に浸透しやすい状態を保ちやすく、翌朝の手触りの違いを感じる人も多いようです。
また、洗う際の水温にも少し意識を向けてみてください。熱すぎるお湯は皮脂を過度に奪ってしまうため、ぬるま湯程度で洗うことを心がけると、肌への負担を抑えられます。
子どもへの影響を気にせず使えるケアの考え方
保育の現場では、子どもの肌に触れる機会が多いため、保育士が使用するハンドクリームなどに気を配る必要があります。香りが強いものや、べたつきが残りやすいものは、子どもが気になったり、触れた後に不快に感じたりすることもあります。
そのため、使用するものを選ぶ際には、無香料で肌なじみの良いタイプを選ぶ、日中に使うものと就寝前に使うものを分けるなど、場面に応じた使い分けを意識すると安心です。
また、園によっては、手に塗るものについて一定のルールがある場合もあります。使用する前に、園内の決まりや周囲との共通認識を確認しておくことも大切な視点です。
悪化させないための生活習慣
肌の状態は、日々の生活習慣とも深く関わっています。まず意識したいのは、十分な睡眠を確保することです。睡眠中は肌の修復が進む時間でもあるため、忙しい日が続く時期ほど、休息の時間を意識的に確保することが、手荒れの悪化を防ぐ助けになります。
食事面でも、栄養バランスを意識することが大切です。特定の食品に偏らず、ビタミンやたんぱく質など、肌の健康を支える栄養素を日々の食事に取り入れることを心がけてみましょう。忙しくて食事が簡単になりがちな時期でも、少しの工夫で補える部分はあります。
また、水仕事や掃除など、家庭での作業時にも手を守る意識を持つことが大切です。ゴム手袋を活用するなど、日常の小さな習慣を見直すだけでも、手元への負担を減らすことにつながります。
無理をせず専門機関に相談する選択肢
セルフケアを続けていても、症状が長引いたり、ひびや出血が見られたり、痛みやかゆみが強くなったりする場合は、早めに皮膚科などの専門機関に相談することをおすすめします。手荒れは「よくあること」と我慢してしまいがちですが、悪化すると日々の業務にも支障をきたすことがあります。
また、職場に対しても、手荒れで困っていることを相談してみることは決して悪いことではありません。園全体で手洗いや消毒の方法を見直すきっかけになることもあり、同じ悩みを抱えている他の職員にとっても助けになる可能性があります。
園全体で取り組める手元ケアの工夫
手荒れは個人の問題として捉えられがちですが、職場全体で意識を共有することで、負担を減らせる場面もあります。例えば、手洗いの際にぬるま湯が使える環境を整えたり、休憩室に保湿剤を置いたりするなど、小さな工夫の積み重ねが、日々の負担軽減につながります。
また、洗浄や消毒の頻度が必要以上に増えていないか、状況に応じた手洗いの方法が共有されているかといった点について、職員同士で話し合う機会を持つことも一つの方法です。手荒れで困っている保育士が一人いれば、同じように悩んでいる人が他にもいる可能性があります。声を上げやすい雰囲気づくりが、結果として職場全体の働きやすさにもつながっていきます。
冬だけでなく、一年を通して意識したいこと
手荒れは冬場に悪化しやすい一方で、季節を問わず起こり得る悩みです。夏場は汗や日焼け止め、水遊びの機会が増えることで、肌への刺激が増えることもあります。そのため、冬だけ集中してケアするのではなく、普段から肌の状態を観察し、変化に気づく習慣を持っておくことが大切です。
「少し赤くなっている」「ひりひりする」といった初期のサインを見逃さず、早い段階でケアを始めることで、悪化を防ぎやすくなります。忙しい毎日のなかでも、一日の終わりに自分の手の状態を確認する時間を、数十秒でも持ってみてください。
また、手元だけでなく、顔や唇など、乾燥しやすい部位全体のケアにも目を向けると、冬を快適に過ごしやすくなります。自分の体をいたわる時間を意識的に作ることも、保育士として長く働き続けるための大切な土台です。
まとめ
保育士にとって、手荒れは職業柄ある程度避けにくい悩みの一つです。しかし、こまめな保湿、刺激を減らす工夫、生活習慣の見直しを組み合わせることで、症状の悪化を防ぎ、快適に過ごせる時間を増やすことができます。
手元の健康は、日々の保育を支える大切な土台です。我慢を重ねすぎず、自分に合ったケアの方法を見つけながら、冬の乾燥した季節を心地よく乗り切っていってほしいと思います。
この記事の監修者

森 大輔(Mori Daisuke)
保育のせかい 代表
《資格》
保育士、幼稚園教諭、訪問介護員
《経歴》
2017年 保育のせかい 創業。2021年 幼保連携型認定こども園を開園するとともに、運営法人として、社会福祉法人の理事長に就任。その他 学校法人の理事・株式会社の取締役を兼任中。
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2026.10.07
2026.10.13





















