「今日の保育、あれもできなかった」「もっとちゃんとやらなきゃ」——一日の終わりに、そんな風に自分を責めてしまうことはないでしょうか。真面目で責任感の強い保育士ほど、こうした感覚を抱えやすい傾向があります。
子どもたちの成長に関わる仕事だからこそ、手を抜きたくないという思いは自然なものです。しかし、その気持ちが行き過ぎると、知らず知らずのうちに自分自身を追い詰めてしまうことがあります。今回は、「完璧を目指さない」という視点から、保育士としての力の抜きどころについて考えてみたいと思います。
真面目な人ほど抱えやすいプレッシャー
保育士という仕事には、正解が一つに定まらない場面が数多くあります。子ども一人ひとりの個性は異なり、同じ声かけをしても反応はさまざまです。マニュアル通りにはいかない場面の連続だからこそ、「これで良かったのだろうか」と振り返る機会も多くなります。
真面目で責任感の強い人ほど、こうした「正解のなさ」に対して不安を感じやすく、常に高い基準を自分に課してしまう傾向があります。他の保育士と自分を比べて落ち込んだり、うまくいかなかった場面を何度も思い返して自分を責めたりすることが積み重なると、次第に心身の余裕が失われていきます。
まず知っておきたいのは、こうしたプレッシャーの感じ方は、決して特別なことではないということです。多くの保育士が、程度の差こそあれ、同じような感覚を抱えながら日々の保育に向き合っています。
「完璧な保育士」を目指すことで生まれる負担
「完璧な保育士でありたい」という思いは、向上心の表れでもあります。しかし、その理想が高くなりすぎると、日々の些細な出来事にも「できなかった」という感覚を持ちやすくなり、達成感よりも不足感の方が大きくなってしまいます。
例えば、行事の準備、日々の記録、保護者対応、子ども一人ひとりへの目配りなど、保育士が担う業務は多岐にわたります。そのすべてを高いレベルでこなそうとすると、時間的にも精神的にも限界が生じるのは当然のことです。それにもかかわらず、「できて当たり前」という基準を自分に課してしまうと、達成できなかったときの自己否定感が強くなってしまいます。
完璧を目指すこと自体は悪いことではありませんが、その基準が現実的でなくなったとき、それは自分自身を苦しめるものに変わってしまいます。
「できていないこと」より「できていること」に目を向ける視点
一日の終わりを振り返るとき、多くの人は「できなかったこと」に意識が向きがちです。しかし、その日一日のなかには、必ず「できたこと」も存在しています。子どもの小さな成長に気づけたこと、笑顔を引き出せた場面、うまく気持ちを受け止められたやり取りなど、意識しなければ見過ごしてしまう瞬間はたくさんあります。
一日の終わりに、「今日できなかったこと」だけでなく、「今日うまくいったこと」を一つでも思い出す習慣を持つことで、自分自身の保育に対する見方が少しずつ変わっていきます。これは特別なことをする必要はなく、通勤の帰り道や就寝前の数分間で構いません。
こうした視点の切り替えは、すぐに大きな変化をもたらすものではありませんが、積み重ねることで、自分を責める癖を少しずつ和らげていく助けになります。
頼ることは弱さではないという考え方
完璧を目指してしまう人ほど、「自分一人でなんとかしなければ」という思いを強く持ちやすい傾向があります。周囲に頼ることを、能力の不足や弱さだと捉えてしまい、結果として一人で抱え込んでしまうケースは少なくありません。
しかし、保育は本来、チームで支え合いながら行うものです。一人ですべてを完璧にこなそうとするよりも、得意なことを持ち寄り、苦手なことは補い合う関係性の方が、結果的にクラス全体の保育の質を高めることにつながります。
「これ、手伝ってもらえますか」「ちょっと相談したいことがあって」——そうした一言を伝えることは、決して恥ずかしいことではありません。むしろ、頼り合える関係を築けているチームこそ、健全に機能しているといえるのではないでしょうか。
力の抜きどころを見つける工夫
完璧を目指さないというのは、手を抜くということではなく、力を注ぐべきところとそうでないところにメリハリをつけるということです。すべての業務に均等に全力を注ごうとするのではなく、「ここは丁寧に」「ここはシンプルに」という判断をしていくことが、長く働き続けるためには欠かせません。
例えば、製作物の完成度にこだわりすぎず、子どもたちが楽しむ過程そのものを大切にするという視点を持つだけでも、準備にかける時間や気持ちの負担は変わってきます。また、書類仕事についても、必要な情報を過不足なく伝えることを意識しつつ、細部にこだわりすぎないという線引きを自分の中に持つことも一つの工夫です。
力の抜きどころは、人によって、また状況によっても異なります。「これくらいで大丈夫」という自分なりの基準を、少しずつ見つけていく過程そのものが、無理のない働き方につながっていきます。
まとめ
完璧を目指す姿勢は、保育士としての誠実さの表れでもあります。しかし、その理想が自分自身を追い詰めるものになってしまっては、本来大切にしたい子どもたちとの時間にも余裕がなくなってしまいます。
「できていないこと」ばかりに目を向けるのではなく、「できていること」にも目を向けること。そして、一人で抱え込まず、周囲に頼りながら力の抜きどころを見つけていくこと。これらは、長く保育士を続けていくための、大切な心の持ち方です。
頑張りすぎてしまう自分に気づいたときは、少し立ち止まって、今日一日のなかにあった「うまくいったこと」を思い出してみてください。完璧でなくても、あなたの保育は、子どもたちにとってかけがえのない時間になっているはずです。
この記事の監修者

森 大輔(Mori Daisuke)
保育のせかい 代表
《資格》
保育士、幼稚園教諭、訪問介護員
《経歴》
2017年 保育のせかい 創業。2021年 幼保連携型認定こども園を開園するとともに、運営法人として、社会福祉法人の理事長に就任。その他 学校法人の理事・株式会社の取締役を兼任中。
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2026.08.29
2026.09.02





















