朝晩の冷え込みが増してくる11月は、冬野菜が旬を迎える季節です。大根、白菜、ねぎ、ほうれん草、かぶなど、寒さのなかで甘みを増す野菜が店先に並び、給食やおやつにも冬の味覚が登場する機会が増えていきます。
秋の味覚に続いて、冬野菜も食育の題材として取り入れやすい食材です。ただし、子どもたちにとっては、少し苦手に感じやすい野菜が多いのも事実です。「食べさせなければ」と構えるのではなく、野菜との出会いを楽しむ視点から、食育の活動を考えてみたいと思います。今回は、冬野菜を題材にした食育のヒントを整理します。
冬が旬の野菜に触れる季節
冬野菜は、寒さにあたることで甘みが増すものが多く、旬の時期には味も香りも豊かです。大根や白菜のように、大きくて存在感のある野菜も多く、子どもたちにとっては、見た目にもインパクトのある食材です。
また、冬野菜の多くは、鍋物や煮物、汁物など、温かい料理に使われます。寒い季節に温かい食べ物を味わう経験は、季節の移り変わりを体で感じる機会にもなります。
食べ物の旬を知ることは、季節感を育てることにもつながります。「冬になったから、この野菜がおいしくなるんだね」という気づきを、日々の保育のなかで少しずつ積み重ねていきたいところです。
冬野菜の特徴と、子どもに伝えるヒント
子どもたちに冬野菜を紹介するときは、野菜ごとの特徴を、分かりやすい言葉で伝えてみましょう。
大根は、土のなかで育つ野菜です。「土のなかで大きくなるんだよ」と伝えると、地面の下で育つ様子を想像するきっかけになります。白菜は、葉っぱが何枚も重なっている野菜で、一枚ずつ剥がしていくと、中の様子が観察できます。ねぎは、独特の香りが特徴で、白い部分と緑の部分の違いも観察できます。
野菜の特徴を伝えるときは、「おいしいよ」と食べることを促すだけでなく、「大きいね」「かたいね」「いい匂いがするね」と、感じたことを一緒に言葉にしていくことが大切です。
絵本や紙芝居で、野菜の育ち方や、野菜が主役のお話を紹介するのも効果的です。物語を通じて野菜に親しみを持つことで、実物に出会ったときの興味も高まります。
触る・観察する・味わう活動アイデア
食育の活動は、食べる前の「触る」「観察する」という段階から始まります。
まず、野菜をそのまま保育室に持ち込み、触ったり、においをかいだりする活動です。丸ごとの大根や白菜は重く、手触りもさまざまで、子どもたちにとって新鮮な体験です。「重いね」「ざらざらしているね」と、感じたことを言葉にしながら関わります。
次に、切った断面を観察する活動です。大根の断面や、白菜の葉の重なり、ねぎの層になった様子など、中の構造を見ることで、新しい発見があります。ただし、包丁などの扱いは、保育士が安全に行いましょう。
野菜の皮むきや、手でちぎる、洗うといった簡単なお手伝いを、子どもたちが体験する機会も考えられます。年齢や園の方針に合わせて、安全に配慮しながら取り入れてみてください。
給食やおやつで冬野菜を味わった際には、「今日の給食には、あの大根が入っているよ」と、体験と食事をつなげて声をかけると、食べる意欲にもつながります。
年齢別の関わり方
食育の関わり方は、子どもたちの年齢や発達段階に合わせて工夫することが大切です。
0〜2歳児クラスでは、野菜の色や形、感触に触れる経験が中心になります。名前を覚えることよりも、「冷たいね」「大きいね」と、感覚を言葉にして伝えることが大切です。野菜に興味を示す姿を受け止めながら、遊びのなかで自然に親しめるようにします。
3〜4歳児クラスでは、野菜の名前や特徴を知ることに興味が出てきます。「これは何の野菜かな」と当てっこをしたり、野菜の絵を描いたりする活動も楽しめます。給食の食材と結びつけて、「この野菜はどこにあるかな」と探す遊びも、おすすめです。
5歳児クラスでは、育ち方や旬について考えることもできます。野菜がどのように育つのか、どうして冬においしくなるのかなど、身近な疑問を話し合うことで、食への関心が深まります。栽培活動を行っている場合は、収穫の喜びを味わい、食べ物への感謝の気持ちを育む機会にもなります。
好き嫌いや食べ方の個人差への向き合い方
冬野菜には、苦みや独特の香りを持つものが多く、子どもたちが苦手に感じやすい食材もあります。ここでは、保育士としての心構えを整理しておきましょう。
まず、好き嫌いは、子どもの成長の過程で自然に見られるものだと理解しておくことです。味覚は、経験を重ねるなかで少しずつ変化していきます。今日は食べられなくても、数か月後には食べられるようになることも珍しくありません。
次に、「全部食べること」を目標にしないことです。「食べなさい」と強く促すと、食事の時間そのものが苦痛になってしまうことがあります。食べ物に関心を持ったこと、匂いをかいでみたこと、少し口に入れてみたことなど、小さな一歩を認める姿勢が大切です。
また、周りの大人が楽しそうに食べる姿は、子どもにとって何よりの手本になります。保育士が「おいしいね」と、自然な笑顔で食べる様子を見せることで、子どもたちも安心して食べ物に向き合えます。
食物アレルギーのある子どもがいる場合には、食材に触れる活動や調理体験の内容について、園内で慎重に確認しておくことが欠かせません。すべての子どもが安心して参加できるよう、代わりの活動を用意するなどの配慮を検討しましょう。
家庭への共有のしかた
食育は、園と家庭が一緒に取り組むことで、より深まります。園での活動の様子を、お便りや連絡帳で共有すると、保護者も、子どもの食への関心の育ちを感じやすくなります。
例えば、「今日は大根を触って、においをかぎました」「白菜の葉っぱが何枚あるか数えました」といった一言を添えるだけでも、家庭での会話のきっかけになります。
ただし、家庭によって、食事の考え方や状況はさまざまです。「家でも食べさせてください」と求めるのではなく、「園ではこんな様子でした」と共有する姿勢を大切にしましょう。保護者の食事づくりの負担や悩みにも、寄り添う気持ちを持つことが大切です。
まとめ
冬野菜は、大根や白菜、ねぎなど、見た目や感触、香りに特徴のある食材が多く、子どもたちが食べ物への興味を広げる絶好の機会です。触る、観察する、味わうという段階を大切にしながら、子どもたちの年齢や興味に合わせた活動を取り入れてみましょう。
好き嫌いがあっても、結果にこだわりすぎず、小さな一歩を認める姿勢が大切です。また、アレルギーへの配慮や、家庭との無理のない共有も忘れずに、子どもたちが「食べることって楽しい」と感じられる時間を、一緒につくっていってください。
この記事の監修者

森 大輔(Mori Daisuke)
保育のせかい 代表
《資格》
保育士、幼稚園教諭、訪問介護員
《経歴》
2017年 保育のせかい 創業。2021年 幼保連携型認定こども園を開園するとともに、運営法人として、社会福祉法人の理事長に就任。その他 学校法人の理事・株式会社の取締役を兼任中。
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2026.11.03
2026.11.06





















