毎年10月27日から11月9日は、読書週間とされています。秋の夜長に本を楽しむ習慣を広げようという趣旨で始まった取り組みで、保育の現場でも、この時期に絵本や読み聞かせに目を向ける園は少なくありません。
絵本は、毎日の保育のなかで最も身近な教材の一つです。一方で、「どんな絵本を選べばいいのか分からない」「読み聞かせのときに子どもが集中してくれない」と悩む保育士も多いのではないでしょうか。今回は、秋の読書週間をきっかけに、絵本や読み聞かせを楽しむ時間のつくり方を整理してみたいと思います。
秋に絵本が似合う理由
秋は、気温が落ち着き、室内でゆったりと過ごす時間が心地よく感じられる季節です。日が短くなり、夕方の保育室に穏やかな空気が流れる時間帯には、絵本の世界にじっくり浸るのにぴったりの雰囲気が生まれます。
また、秋は、どんぐりや落ち葉、収穫物など、子どもたちにとって身近な自然の題材が増える季節でもあります。散歩で出会った発見を、絵本の世界とつなげやすいタイミングでもあります。
読書週間という言葉をきっかけに、普段の絵本の時間を少し見直してみる。そんな気持ちで取り組むと、無理なく新しい工夫を取り入れやすくなります。
読み聞かせで育つ力
絵本の読み聞かせには、さまざまな育ちが含まれています。
まず、言葉の力です。絵本には、日常生活ではあまり耳にしない言葉や、リズムのある表現が登場します。繰り返し聞くうちに、子どもたちは言葉の響きや意味を自然に吸収していきます。
次に、想像力です。絵や言葉を手がかりに、場面や登場人物の気持ちを思い描く経験は、想像する力を育てます。
さらに、気持ちの共有です。保育士と子ども、子ども同士が同じ物語を共有し、「おもしろいね」「どきどきしたね」と感じ合う時間は、安心感や仲間意識につながります。
加えて、じっと聞く経験を通して、集中して人の話を聞く姿勢も少しずつ育っていきます。ただし、これらは「身につけさせる」ものではなく、楽しむなかで自然に育まれていくものです。
年齢別の絵本の選び方・読み方
絵本の選び方や読み方は、子どもたちの年齢や発達段階によって変わってきます。
0〜1歳児クラスでは、はっきりした絵と、シンプルで心地よいリズムの言葉が中心になります。ページをめくる動きや、音の響きを楽しむ絵本が親しまれます。保育士の膝に座って、ゆったりと読んでもらう時間は、絵本そのものと同じくらい大切な体験です。
2歳児クラスになると、繰り返しのある言葉や、身近な生活を題材にした絵本を楽しめるようになります。同じ絵本を何度も「読んで」と求めるのも、この時期ならではの姿です。繰り返し読むなかで、言葉を覚えて一緒に口にする姿も見られるようになります。
3〜4歳児クラスでは、ストーリーのある絵本を楽しめるようになります。登場人物の気持ちに共感したり、「次はどうなるかな」と展開を予想したりする姿が見られます。読み終わった後の感想を自由に話す時間があると、気持ちを言葉にする経験にもなります。
5歳児クラスでは、少し長めの物語や、知識の絵本、言葉遊びの絵本なども楽しめます。友達同士で絵本を見せ合ったり、物語の続きを想像したりと、読む楽しみが広がっていきます。
読み聞かせの進め方のコツ
読み聞かせの質は、特別な技術よりも、ちょっとした心がけで変わってきます。
まず、読む前に、保育士自身が絵本の内容に目を通しておくことです。話の流れやページをめくるタイミングを把握しておくと、落ち着いて読めます。
次に、子どもたちが座る位置や環境を整えることです。全員の顔が見える位置に座れるように、子どもたちの配置を工夫したり、周りにおもちゃなど気が散るものがない場所を選んだりすると、集中しやすくなります。
読み方としては、大げさに演じすぎる必要はありません。声のトーンや間の取り方を意識しながら、物語の世界を丁寧に伝えることを大切にします。ページをめくるときに少し間を置くと、子どもたちの期待が高まります。
また、途中で子どもたちが話しかけてくることもありますが、無理に止める必要はありません。子どもの反応を受け止めながら進めることで、双方向の楽しい時間になります。
集中できない子どもへの関わり方
読み聞かせの時間に、落ち着かない子どもや、途中で立ち歩いてしまう子どもがいるのは、決して珍しいことではありません。
まず、「聞かせなければ」と構えすぎず、子どもの気持ちに寄り添う姿勢が大切です。その日の体調や気分、直前の遊びの余韻など、さまざまな理由で集中しにくい日があります。
絵本の長さや内容が、今の子どもの発達に合っているかどうかも見直してみましょう。短くて動きのある絵本や、参加型の絵本を取り入れると、興味を持ちやすくなります。
また、少人数で読む機会を設けるのも一つの方法です。大勢のなかでは集中しにくい子どもも、少人数であれば落ち着いて楽しめることがあります。
秋の自然やテーマと絵本をつなげる
秋ならではの題材と絵本をつなげると、子どもたちの興味が広がります。
例えば、散歩でどんぐりや落ち葉を拾ってきた日には、秋の自然を題材にした絵本を読んでみます。実際に見たり触れたりした体験と物語が結びつくことで、絵本の世界がより身近に感じられます。
収穫の季節には、さつまいもや果物が登場する絵本もよく親しまれます。給食やおやつの時間とつなげて、食べ物への興味を深めるきっかけにもなります。
また、季節の移り変わりや、秋の夜空、動物たちの冬支度を描いた絵本もあります。子どもたちと「そろそろ寒くなってきたね」と話しながら読むと、季節を感じる時間になります。
絵本コーナー・環境づくりの工夫
読み聞かせの時間だけでなく、子どもたちが自由に絵本を手に取れる環境づくりも大切です。
絵本コーナーは、落ち着いて過ごせる、少し静かな場所に設けると、じっくり絵本を楽しみやすくなります。クッションや小さなマットを置くなど、居心地のよい雰囲気づくりも効果的です。
絵本の置き方も工夫したいところです。表紙が見えるように並べると、子どもたちが興味を持った絵本を選びやすくなります。季節に合わせて、並べる絵本を入れ替えるのもよいでしょう。
また、絵本を大切に扱うことを、子どもたちと一緒に確認する機会を持つのもおすすめです。「やさしくめくろうね」「読んだら元の場所に戻そうね」と、丁寧に伝えることで、物を大切にする気持ちも育まれます。
家庭へのつなげ方
絵本の楽しさは、家庭にも広げることができます。園で子どもたちが気に入っている絵本を、お便りや連絡帳で紹介すると、家庭での絵本の時間のきっかけになります。
ただし、家庭によって、絵本を読む時間の取り方や環境は異なります。忙しい毎日のなかで、「毎日読んでください」と押しつけるのではなく、「子どもたちはこの絵本を楽しんでいます」という共有の姿勢を大切にしましょう。
また、園で絵本の貸し出しを行っている場合は、無理のない範囲で、家庭で親子の時間を楽しんでもらえるように伝えてみてください。
まとめ
秋の読書週間は、絵本や読み聞かせの時間を、あらためて見つめ直すよい機会です。絵本は、言葉や想像力、気持ちの共有など、さまざまな育ちを支えてくれる身近な存在です。
年齢に合った絵本選びや、落ち着いて楽しめる環境づくり、子どもの様子に寄り添った進め方を心がけることで、読み聞かせの時間はより豊かなものになります。集中できない日があっても焦らず、子どもたちと一緒に、秋の夜長ならぬ、秋の保育室で、絵本のひとときを味わってみてください。
この記事の監修者

森 大輔(Mori Daisuke)
保育のせかい 代表
《資格》
保育士、幼稚園教諭、訪問介護員
《経歴》
2017年 保育のせかい 創業。2021年 幼保連携型認定こども園を開園するとともに、運営法人として、社会福祉法人の理事長に就任。その他 学校法人の理事・株式会社の取締役を兼任中。
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