保育園で働く際に、社会福祉法人や株式会社などの運営母体の違いによって、働きやすさに差があるのか気になる方も多いでしょう。
両者は運営目的や待遇、働き方に明確な違いがあり、自分に合った職場を見極めるには違いの認識が欠かせません。
本記事では、社会福祉法人と株式会社の保育園の違いやそれぞれのメリット・デメリットを紹介します。
安定した働き方を目指す方にとって、有益な選択肢を見つけるヒントにしてください。
Contents
社会福祉法人が運営する保育園とは
社会福祉法人が運営する保育園は、営利を目的としない公共性の高い施設です。
地域の保育ニーズに応えることを目的に設立され、国や自治体の助成を受けながら安定的に運営されています。
株式会社が運営する保育園との違い
以下に、社会福祉法人と株式会社のおもな違いをまとめました。
項目 | 社会福祉法人 | 株式会社 |
性質 | 非営利法人 | 営利法人 |
事業目的 | 社会福祉事業に限定 | 自由 |
設立手続き | 所轄庁の認可が必要 | 登記のみで設立可能 |
所轄庁 | 都道府県・市町村など | なし(法務局で登記) |
法人税 | 原則非課税(収益事業に限り22%課税) | 所得に対し30%課税 |
固定資産税 | 社会福祉事業に使う物件は非課税 | 課税あり |
運営費の補助金 | あり(国・自治体から交付) | 一部あり(認可園の場合) |
社会福祉法人は税制や補助金面で公的支援が手厚く、安定した運営が可能です。
一方、株式会社は柔軟な経営も可能ですが、資金や制度面での負担が大きくなる可能性もあります。
社会福祉法人の保育園で働くメリット
ここでは、代表的な3つのメリットを紹介します。
- 長期的に安定して働ける
- 経験豊富なベテランの保育士が多い
- 研修やキャリアアップ支援が充実している
それぞれ見ていきましょう。
長期的に安定して働ける
社会福祉法人の保育園は、国や自治体からの補助金により運営されているため、経営が安定しています。
運営に必要な人件費・設備費・給食費などが公的資金で支えられているため、経済状況に左右されにくい傾向にあります。
たとえば、「保育所等整備交付金」は社会福祉法人が対象となる国の補助金制度で、新設・改修・耐震化などの整備に活用可能です。
保育士の雇用も安定しやすく、長期的に安心して働き続けられる環境が整っています。
経験豊富なベテランの保育士が多い
社会福祉法人の保育園では、長年勤務している保育士が多く在籍しています。
そのため、職場には知識や経験の蓄積があり、若手保育士にとっては学びの場が豊富です。
ベテランの指導のもとで実務を経験できるため、保育技術や対応力を自然に身につけられます。
とくに経験が浅い段階で現場に入る場合には、頼れる先輩の存在が心強いでしょう。
研修やキャリアアップ支援が充実している
新人研修から中堅職員向けの研修、管理職を目指すための研修まで、段階的なカリキュラムが用意されている法人もあります。
研修は園内だけでなく、法人全体や地域単位で実施される場合もあり、ほかの園と交流しながら学べる点もメリットです。
国の「処遇改善等加算Ⅱ」を活用したキャリアアップ研修や、外部講師による専門講座を実施するケースも増えています。
社会福祉法人の保育園で働くデメリット
社会福祉法人独自の組織運営や制度により、柔軟性や効率性に課題が出る場合もあります。
ここでは、代表的な3つのデメリットを解説します。
- 異動や幅広い業務を求められる
- 運営方針や人事の自由度が低い
- ICT化が進んでいない園もある
それぞれ見ていきましょう。
異動や幅広い業務を求められる
社会福祉法人では、複数の保育園や関連施設を運営しているケースが多く、法人内での異動もあります。
特定の園に長く勤務したいと考える保育士にとっては、異動が負担になるでしょう。
社会福祉法人が運営する園は、認可保育園や認定こども園など、定員の多い施設が多いため業務量も多くなりがちです。
行事の企画・運営、保護者対応など、保育以外の業務も幅広く、柔軟な対応が求められるでしょう。
運営方針や人事の自由度が低い
長年同じ地域で運営されている法人は、トップダウン型の経営体制が根付いている場合も少なくありません。
園長と地域とのつながりが強く、園内でも発言力を持つケースも見られます。
一部の園では、園長の親族が主要な役職を担うなど、家族経営的な側面が色濃く出ている場合もあります。
このような組織体制では現場の意見が反映されにくく、公平性に疑問を感じやすいでしょう。
ICT化が進んでいない園もある
長く地域に根差して運営されている園では、従来の保育方針や業務の進め方を重視する傾向にあります。
そのため、新しい取り組みに対して慎重な姿勢が見られる場合もあります。
保育日誌や連絡帳、園内の事務処理なども紙ベースで行われているケースも多く、業務効率化が進みにくい状況です。
新しい保育方法やICTツールを提案しても、今までのやり方が優先され、意見が通りにくい雰囲気の園もあります。
ICT活用の効率的な働き方を重視したい方には、不便さを感じる場面もあるでしょう。
株式会社の保育園で働くメリット
ここでは、代表的な株式会社の保育園で働く3つのメリットを紹介します。
- キャリアアップのチャンスがある
- ICT導入などに柔軟な姿勢がある
- 保育園の立ち上げから携われる
それぞれ詳しく見ていきます。
キャリアアップのチャンスがある
株式会社の保育園では、職員の成長や成果に応じて昇格や役職登用がスピーディーに行われる傾向にあります。
評価制度が整備されている企業も多く、年齢や経験年数に関わらず実力次第でキャリアアップも可能です。
エリアマネージャーや人材育成担当など、本部業務に関わるポジションに進む道もあり、将来の選択肢が広がります。
主体的に学び、上のポジションを目指したい方には、大きなやりがいとなるでしょう。
ICT導入などに柔軟な姿勢がある
株式会社の保育園は、業務効率化や保育の質向上を目的にICTの導入に積極的です。
登降園管理や保護者連絡、日誌作成などをタブレットやクラウド上で完結できる仕組みを採り入れている園もあります。
職員の負担軽減や保護者とのコミュニケーションの質も向上するため、保育全体の満足度も高まりやすいでしょう。
保育園の立ち上げから携われる
株式会社では新規事業として保育園を展開している企業も多く、開園準備から携われるチャンスもあります。
園のコンセプト設計や内装レイアウト、保育カリキュラムの企画など、運営基盤を一から作る達成感はやりがいにもつながります。
立ち上げ期は忙しさもありますが、自分の意見が反映されやすく、職場作りの醍醐味を感じられる場面も多くあるでしょう。
株式会社の保育園で働くデメリット
株式会社の保育園は、民間企業ならではの課題もあります。
ここでは、おもなデメリットを紹介します。
- 経験豊富なベテランの保育士が少ない
- 会社に保育園運営のノウハウがない場合もある
- 小規模な企業などは経営リスクがある
それぞれ詳しく見ていきます。
経験豊富なベテランの保育士が少ない
株式会社が運営する保育園は新しく開設された施設も多く、在籍する保育士も若手中心の場合もあります。
そのため、経験豊富なベテラン保育士が少なく、現場での実践的な指導や知見の共有が難しくなります。
新人保育士にとっては学びの機会が限られ、自己判断で対応しなければならない場面もあり、負担に感じるかもしれません。
安心して相談できる先輩が少ない環境は、職員の成長や定着に影響を及ぼすおそれもあります。
会社に保育園運営のノウハウがない場合もある
保育事業に新規参入した企業の中には、保育園運営の知識や実績が乏しいケースもあります。
保育方針や職場環境の整備が不十分で、現場への負担が集中してしまう場合も考えられます。
とくに制度運用や保護者対応のルールが曖昧な場合は、トラブルの原因にもなりかねません。
運営体制が整っているかなど、事前に企業実績や社内体制の確認が大切です。
小規模な企業などは経営リスクがある
小規模な事業者や新興企業が運営する園では、収益の確保が難しく、安定した雇用が維持できないケースも見られます。
企業が保育事業から撤退する判断を下した場合、保育士の配置や園児の受け入れにも大きな影響を与えかねません。
長期的に安定した環境を求める場合は、運営法人の事業規模や経営実績を見極めましょう。
社会福祉法人で働く保育士の給料
内閣府の資料によると私立保育園の運営別平均給与は、以下のとおりです。
施設 | 私立保育園全体 | 社会福祉法人 | 株式会社 |
平均月額 | 28.1万円 | 27.8万円 | 31.5万円 |
社会福祉法人で勤務する保育士の平均給与は月額27.8万円で、年収にすると330万円程度です。
厚生労働省のデータでは、保育士全体の平均月収が27.7万円なので、社会福祉法人の給与水準も業界平均に近いといえます。
株式会社の保育園と比較例
一方、株式会社が運営する保育園の平均給与は月額31.5万円です。
私立保育園での各平均給与を比較すると、社会福祉法人の給与はやや低めで、法人形態によって差があります。
しかし、実際の給与は地域や法人の規模、福利厚生の内容で大きく異なるため、「社会福祉法人=低賃金」とは一概にいえません。
たとえば、「保育のせかい」に掲載している以下の社会福祉法人による求人では、以下のように高水準の募集も見られます。
場所 | 大阪府 |
園の種類 | 認定こども園 |
職種 | 保育教諭 |
雇用形態 | 正職員 |
給与 | 月給:28万2,400円〜29万1,360円 |
備考 | 経験加算あり |
実際の求人情報を見てみると、月額28万円以上高めに設定されている社会福祉法人もあります。
経営形態だけで判断せず、求人票の内容を確認して、具体的な待遇条件の比較が重要です。
社会福祉法人が運営する保育園の求人状況
厚生労働省の調査によれば、社会福祉法人は全国の保育施設・事業所のうち、約7割を占めます。
割合の高さからも分かるように、社会福祉法人が運営する保育園は数が多く、安定した採用ニーズが見込まれるでしょう。
さらに、子ども家庭庁の統計では、保育士の有効求人倍率は全国平均で3.05倍と、全職種平均の1.27倍を大きく上回っています。
大阪府では有効求人倍率が3.29倍と高く、関西全体でも保育士の需要が高まっているでしょう。
社会福祉法人の保育園に就職するには
社会福祉法人の保育園就職を目指すには、情報収集と比較が重要です。
ここでは、社会福祉法人の保育園に就職する方法を2つ紹介します。
- 求人サイトを利用する
- 転職エージェントの活用する
詳しく見ていきましょう。
求人サイトを利用する
社会福祉法人の保育園に就職したい場合は、保育士専門の求人サイトを活用するのが効率的です。
条件を絞って検索できるため、自分に合った園を見つけやすく、比較・検討にも役立ちます。
中でも「保育のせかい」は、社会福祉法人の求人情報が豊富に掲載しており、地域や給与条件から簡単に絞り込みが可能です。
求人先の保育園のHPも掲載されているので、職場の雰囲気なども応募前に具体的なイメージを持ちやすいでしょう。
自分のペースで求人を探したい方や、まずは情報収集から始めたい方におすすめです。
転職エージェントの活用する
転職エージェントを活用すれば、希望条件に合った求人の紹介や面接対策など、手厚いサポートを受けながら就職活動を進められます。
「保育のせかい」では、求人紹介に加え、専任のキャリアアドバイザーによる個別サポートも可能です。
非公開求人の紹介や、選考通過率を高めるための書類添削・面接対策も行っており、はじめての転職でも安心です。
アドバイザーの多くが保育士の有資格者なので、転職を成功させたい方にとって心強いサービスといえるでしょう。
まとめ|安定した働き方を目指すなら社会福祉法人の保育園の選択肢も
社会福祉法人の保育園は、国や自治体の補助による安定した運営体制が整っており、保育士として長く働きたい方に適した環境です。
研修制度やキャリア支援も充実している一方で、異動や伝統的な体制に戸惑う場面もあるかもしれません。
株式会社の保育園は柔軟な制度やICT導入などで、効率的にスキルアップを図れる環境が整っています。
それぞれの法人形態の特徴を理解したうえで、自分の働き方に合う職場を選ぶことが重要です。
大阪の保育士求人なら「保育のせかい」へお任せください。
現役の保育士が監修を行う豊富な求人と丁寧なサポートで、あなたに合った職場探しを応援します。
この記事の監修者

森 大輔(Mori Daisuke)
保育のせかい 代表
《資格》
保育士、幼稚園教諭、訪問介護員
《経歴》
2017年 保育のせかい 創業。2021年 幼保連携型認定こども園を開園するとともに、運営法人として、社会福祉法人の理事長に就任。その他 学校法人の理事・株式会社の取締役を兼任中。
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