日々の業務に追われ、「保育の質」についてじっくり考える機会は少ないかもしれません。
しかし、質の高い保育は子どもの成長はもちろん、保育士自身のやりがいにも直結する大事なテーマです。
よりよい環境で自分の理想とする保育を実現したい、と考えるのは自然なことでしょう。
本記事では、厚生労働省の指針をもとに「保育の質」の基本から、現場で実践できる質の向上策、転職時に役立つ園の見極め方を解説します。
ぜひ今後のキャリアを考えるうえでの参考にしてください。
Contents
保育の質とは?厚生労働省が示す3つの観点
「保育の質」という言葉はよく使われますが、その定義は曖昧に感じられるかもしれません。
保育の質を一元的に定義することはできません。
しかし、OECD(経済協力開発機構)は、保育の質を「子どもたちが心身ともに満たされ、豊かに生きていくことを支える環境や経験」と捉えています。
ここでは、厚生労働省の資料を参考に、以下3つの観点を解説します。
- 保育の「内容」
- 保育の「環境」
- 保育の「人材」
詳しく見ていきましょう。
参考資料:厚生労働省「保育所等における保育の質の確保・向上に係る関連資料」
保育の「内容」
保育の「内容」とは、日々の保育活動そのものの質を指し、その根幹には「保育所保育指針」があります。
この指針では、子どもの生命を守り情緒の安定を図る「養護」と、健やかな成長を支える「教育」を一体的に行うことが求められています。
乳児期では「健やかに伸び伸びと育つ」「身近な人と気持ちが通じ合う」「身近なものとかかわり感性が育つ」という3つの視点を。
幼児期では「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」の五領域を通じたバランスのよい発達が重視されます。
単に活動をこなすのではなく、一人ひとりの子どもの発達過程に応じて、主体性を育むようなかかわり方が、保育の「内容」の質を高めます。
保育の「環境」
保育の「環境」の質は、施設の設備といった物理的な側面と、人間関係などの心理的な側面の両方を含みます。
物理的環境としては、施設の広さや衛生管理、安全対策が基本です。
事故防止や感染症対策、アレルギー対応のガイドラインが整備されていることは、子どもと保育士が安心して過ごすための大前提となります。
国が定める職員配置基準を満たしているか、それ以上に手厚い配置がされているかは、保育士一人ひとりの業務負担に直結します。
子どもが落ち着いて過ごせる空間や、興味に応じて遊び込めるコーナーが用意されているかも、質の高い環境の指標です。
子どもと保育士の双方が、心身ともに安全で快適に過ごせる環境を整えることが不可欠です。
保育の「人材」
保育の「人材」の質とは、単に保育士資格を持つ職員がいることだけでなく、専門性を高め、チームとして協働できる体制が整っていることを指します。
質の高い保育を実践するためには、保育士一人ひとりが専門職としての自覚を持ち、学び続ける姿勢が肝心です。
園としてキャリアアップ研修への参加を支援したり、園内研修を定期的に実施したりする体制は、職員の成長を後押しします。
また、個々のスキルだけでなく、職員同士が保育観や課題を共有し、協力して保育にあたる「協働性」も欠かせません。
職員一人ひとりが専門性を高め、組織全体で保育の質向上に取り組む風土があることが、質の高い「人材」の証といえるでしょう。
なぜ保育の質を考えるのが重要なのか
保育の質を追求することは、子どもや保護者のためだけではありません。
それは、保育士自身の働きやすさや満足度にも直結する取り組みです。
ここでは、以下3つの観点から保育の質を考える重要性を解説します。
- 子どもの健やかな発達の促進
- 保護者との信頼関係の構築
- 保育士のやりがいと満足度の向上
詳しく見ていきましょう。
子どもの健やかな発達の促進
質の高い保育環境は、子どもの心身の健やかな発達に欠かせない土台です。
保育士との安定した愛着関係の中で、子どもは自己肯定感を育み、他者とかかわる社会性を身につけます。
主体的に遊び込める環境は、思考力や創造性といった「生きる力」の基礎を養います。
栄養バランスの取れた食事や質のよい睡眠、十分な運動機会が保証されることも、子どもの健康な身体作りには不可欠です。
質の高い保育は、子どもたちが自信を持ち、情緒的に安定して過ごすための基盤となり、将来にわたる心身の健康を支えます。
保護者との信頼関係の構築
保育の質を高めることは、保護者からの厚い信頼を得て、安心して子どもを預けてもらうためにも必須です。
質の高い園では、日々の丁寧なコミュニケーションや情報共有を通じて、保護者との信頼関係を築きます。
送迎時の会話や連絡帳、園だよりなどを通じて、園と家庭が子どもの成長を共に喜び、支え合う関係を構築できるでしょう。
この信頼関係は、保育士が日々の業務で直面しがちな保護者対応の課題を緩和し、仕事への満足度を高めることにもつながります。
園と家庭が良好な連携を築くことで、子どもはより安定した環境で成長でき、保育の質はさらに高まります。
保育士のやりがいと満足度の向上
質の高い保育を実践している園は、保育士が専門職として尊重され、やりがいを持って働き続けられる環境が整っています。
適切な人員配置やICT化による業務効率化が進んでいる職場では、保育士は書類仕事に追われることなく、子ども一人ひとりとじっくり向き合う時間を確保できます。
その結果、保育本来の楽しさややりがいを実感し、仕事への満足度が高まるでしょう。
また、質の高い保育を実践している園は、保育士の間でも評判がよく、意欲の高い人材が集まりやすくなります。
その結果、職員の定着率が高まり、人間関係が良好でチームワークの取れた働きやすい環境が生まれるという好循環が期待できます。
保育士に必要な7つの能力とは?
質の高い保育を実践するためには、保育士一人ひとりの能力が不可欠です。
ここでは、保育士にとくに必要とされる7つの能力について解説します。
- 専門的知識に基づく発達援助の知識及び技術
- 生活援助の知識及び技術
- 保育の環境を構成していく知識及び技術
- さまざまな遊びを豊かに展開していくための知識及び技術
- 関係構築の知識及び技術(子ども同士や保護者とのかかわり)
- 保護者等への相談や助言に関する知識及び技術
- 倫理観や人間性
それぞれ見ていきましょう。
参考資料:厚生労働省「保育士の確保・資質向上等」
専門的知識に基づく発達援助の知識及び技術
保育士には、子どもの発達段階に関する専門的な知識が不可欠です。
乳幼児期の子どもは心身ともに著しい成長を遂げるため、それぞれの年齢や個人に合った発達援助が求められます。
たとえば、言葉の発達を促すための絵本の読み聞かせや、身体能力を高めるための遊びの提供など、知識にもとづいたかかわりが子どもの成長を支えます。
発達の特性を理解することで、子どもの行動の背景にある思いを汲み取り、一人ひとりの可能性を最大限に引き出せるでしょう。
生活援助の知識及び技術
子どもの生命を守り、情緒の安定を図る「養護」の側面も保育士の役割です。
食事や排泄、睡眠・着脱といった基本的な生活習慣が自立に向かうよう、一人ひとりの発達に合わせて援助する知識と技術が求められます。
単に身の回りの世話をするだけでなく、子どもが「自分でできた」という達成感を味わえるようなかかわり方が大切です。
たとえば、スプーンの持ち方を丁寧に教えたり、トイレトレーニングで焦らず見守ったりする姿勢が子どもの自立心を育みます。
安全で衛生的な環境を保ちながら、子どもが安心して生活できるような援助が不可欠です。
保育の環境を構成していく知識及び技術
子どもが主体的に活動できるような環境を整える能力も、保育士にとって重要です。
子どもは環境とのかかわりを通じて多くを学び、成長します。
そのため、子どもの興味や発達に合わせて、遊びが豊かに展開できるような物的・空間的な環境を構成する技術が求められます。
たとえば、ままごとコーナーにお店屋さんの道具を追加したり、製作コーナーに多様な素材を用意したりすることで、子どもの遊びはより発展するでしょう。
また、子どもが落ち着いて過ごせる静かなスペースを確保するなど、動と静のバランスを考えた環境作りも質の高い保育には欠かせません。
さまざまな遊びを豊かに展開していくための知識及び技術
遊びは子どもにとって貴重な学びの場です。
保育士には、子どもの発達を促す多様な遊びの知識と、それを豊かに展開させる技術が求められます。
年齢に応じた手遊びや歌、製作活動・運動遊びなど、幅広いレパートリーを持っていることが望ましいです。
さらに、子どもの「やってみたい」という気持ちを引き出し、遊びが発展していくように援助する力もなくてはなりません。
たとえば、子どもたちが始めたごっこ遊びに保育士が客として参加したり、必要な小道具を一緒に作ったりすることで、子どもの想像力や協同性を育めます。
遊びを通して、子どもたちの学びを深める専門性が問われます。
関係構築の知識及び技術(子ども同士や保護者とのかかわり)
保育士は、子どもと保護者、同僚など多くの人とかかわる仕事です。
そのため、円滑な人間関係を築くためのコミュニケーション能力は必須です。
子どもに対しては、一人ひとりの気持ちに寄り添い、信頼関係を築くことが基本となります。
子ども同士のトラブルの際には、双方の気持ちを受け止めながら、自分たちで解決できるよう仲立ちをする役割も担います。
保護者に対しては、子どもの園での様子を丁寧に伝え、子育ての悩みや不安に耳を傾ける姿勢が信頼関係につながるでしょう。
良好な関係を築くことで、園と家庭が連携して子どもの成長を支えられます。
保護者等への相談や助言に関する知識及び技術
保育士は、子育ての専門家として保護者から相談を受ける機会も多くあります。
そのため、保護者の気持ちに寄り添いながら、適切な情報提供や助言を行う知識と技術が求められます。
たとえば、子どもの発達に関する悩みやしつけに関する相談に対し、専門的な知識にもとづいて具体的なアドバイスをすることが期待されるでしょう。
ただし、一方的に指導するのではなく、保護者の考えや家庭の方針を尊重し、共に解決策を考えていくパートナーとしての姿勢が肝心です。
必要に応じて地域の専門機関を紹介するなど、家庭を社会資源につなぐ役割も担っています。
倫理観や人間性
保育士は子どもの人権を尊重し、一人ひとりの人格を大切にする高い倫理観を持つことが求められます。
子どものプライバシーを守り、いかなる差別や偏見も持たずにすべての子どもを平等に受け入れる姿勢が基本です。
また、子どもたちの模範となる存在として、社会人としての責任ある行動や思いやりのある態度も欠かせないものです。
誠実さや忍耐強さ、そして何よりも子どもを愛する豊かな人間性が、保育士という仕事の根幹を支えます。
専門的な知識や技術だけでなく、人としての温かさや信頼感が、質の高い保育を実現するためには不可欠です。
保育の質が低下する原因とは?多くの保育士が抱える課題
多くの保育園で「保育の質」が課題となる背景には、業界が抱える構造的な問題が存在します。
ここでは、保育の質の低下につながるおもな原因について、4つの側面から解説します。
- 深刻な保育士不足と過重な業務負担
- 職員間のコミュニケーション不足
- 研修機会の不足とキャリアへの不安
- 多様化する子どもや家庭への対応
詳しく見ていきましょう。
深刻な保育士不足と過重な業務負担
保育の質を低下させる最大の要因は、慢性的な保育士不足です。
国の配置基準はあくまで最低限のラインであり、この基準ギリギリで運営している園では、職員が1人でも休むと現場が回らなくなります。
その結果、残された職員には過剰な業務負担がのしかかり、休憩が取れない、サービス残業や持ち帰り仕事が常態化するといった状況に陥りがちです。
このような環境では、子どもと丁寧にかかわる精神的・時間的な余裕は生まれません。
安全を確保するだけで精一杯になり、保育本来の目的を見失ってしまうことも少なくないです。
職員間のコミュニケーション不足
過重な業務負担は、職員間のコミュニケーションを希薄にする原因となります。
日々の忙しさから情報共有が疎かになり、それが思わぬ事故や保護者とのトラブルにつながることも少なくありません。
また、ストレスや疲労が蓄積した職場では、人間関係が悪化しがちです。
転職理由の上位に常にあげられる「人間関係の問題」は、個人の相性だけでなく、こうした劣悪な労働環境が生み出している側面があります。
チームで子どもを育てるべき保育の現場において、職員間の不和は保育の質を直接的に低下させる要因です。
参考資料:厚生労働省「図表1-2-62 保育士として就業した者が退職した理由(複数回答)」
研修機会の不足とキャリアへの不安
自身の専門性を高めるための研修に参加する時間がなかったり、園として研修参加を支援する体制が整っていなかったりするケースも多く見られます。
保育士が専門職として成長し続けられない環境は、仕事へのモチベーションを低下させ、将来への不安を増大させます。
保育の知識や技術は常に更新されており、学び続けなければ質の高い保育を提供することは困難です。
意欲のある若手や中堅が育たず、ベテラン職員にばかり負担が集中するという状況は、組織全体の成長を妨げ、保育の質の停滞を招きます。
多様化する子どもや家庭への対応
現代の保育現場では、発達に特性のある子どもや外国籍の家庭、虐待のリスクを抱える家庭など、より専門的で個別的な配慮を必要とするケースが増加しています。
これらの対応には、専門的な知識や関係機関との連携が不可欠ですが、人員に余裕のない現場では、担任保育士個人の努力と献身に委ねられがちです。
適切なサポート体制がないままでは、きめ細やかな対応は難しく、結果としてすべての子どもへの保育の質が低下する可能性があります。
保育の質の向上に向けた取り組みの具体例8選
保育の質を高めるためには、園全体で組織的に取り組まなければなりません。
質の高い保育を実践している園は、子どもと保育士の双方にとってよりよい環境を作るために、さまざまな工夫を凝らしています。
ここでは、保育の質の向上に向けた取り組みを8つ紹介します。
- ICT導入による事務負担の削減
- 定期的な話し合いでチームワークを醸成
- 充実した研修制度でキャリアアップを支援
- 明確な目標設定と公正な評価制度
- 子どもの主体性を育む環境構成
- 職員の心身を守るメンタルヘルスケア
- 働きやすい労働環境の整備
- 保護者との連携を密にする体制作り
それぞれ見ていきましょう。
参考資料:こども家庭庁「保育の質の向上に向けて」
ICT導入による事務負担の削減
保育士の大きな負担となっている書類作成業務を、ICTシステムの導入によって効率化する取り組みです。
ICTとは「情報通信技術」のことで、園児の登降園管理や指導計画の作成、保護者への連絡などをデジタル化します。
たとえば、手書きだった日誌や連絡帳をタブレットで入力できるようにすれば、事務作業の時間が大幅に短縮されるでしょう。
また、保護者へのお知らせもアプリで一斉配信できるため、お便りの印刷や配布の手間が省けます。
このようにして創出された時間を、子どもと向き合う時間や保育の準備に充てられるため、保育の質の向上に直接的に貢献する効果的な取り組みです。
定期的な話し合いでチームワークを醸成
職員全員が定期的に集まり、保育について話し合う機会を設けることは、チームワークを高めるうえで欠かせないものです。
日々の情報交換はもちろん、月に一度の職員会議などで、子どもの育ちや保育の悩み、改善点などを共有します。
肝心なのは、経験や役職にかかわらず、誰もが自由に意見をいえる雰囲気作りです。
たとえば、会議で出たアイデアを次の保育計画に反映させるなど、話し合いの結果が実践につながる仕組みがあれば、職員の参加意欲も高まります。
職員間の相互理解が深まり、園全体で同じ方向を向いて保育に取り組めるようになることで、一貫性のある質の高い保育が実現できます。
充実した研修制度でキャリアアップを支援
保育士が専門性を高め、キャリアを築いていけるよう、園が研修制度を積極的にサポートする取り組みです。
国が定めるキャリアアップ研修への参加を推奨し、研修費用を園が負担したり、勤務時間内に研修を受けられるように配慮したりします。
外部研修だけでなく、園内で経験豊富な保育士が講師となる勉強会を開いたり、先進的な保育を実践している園への視察研修を企画したりすることも有効です。
職員一人ひとりが学びたいという意欲に応え、成長を後押しする姿勢は、保育士のモチベーションを大きく向上させます。
結果として、園全体の保育力が底上げされ、保育の質の向上につながります。
明確な目標設定と公正な評価制度
職員一人ひとりが自身のキャリアや役割について明確な目標を設定し、それに対する頑張りが公正に評価される仕組みを整えることも大切です。
年度の初めに、園長と面談しながら個人の年間目標を設定し、期末にその達成度を振り返る、といった目標管理制度がこれにあたるものです。
評価は単に経験年数だけでなく、後輩指導への貢献や研修での学びの実践など、多様な側面から多角的に評価することが求められます。
自分の成長や貢献がきちんと認められ、処遇に反映されるという実感は、保育士の仕事への意欲を高めるでしょう。
目標を持って主体的に業務に取り組む職員が増えることで、組織全体の活性化が期待できます。
子どもの主体性を育む環境構成
保育の質を高めるためには、子どもが「自分でやってみたい」と思えるような環境作りが欠かせません。
これは、子どもが自ら遊びを選び、試行錯誤できるような物的環境と、それをあたたかく見守る人的環境の両方から成り立ちます。
たとえば、おもちゃを子どもの目線に合わせて配置したり、製作コーナーにさまざまな素材を用意して自由に使えるようにしたりする工夫が考えられます。
保育士はすぐに答えを教えるのではなく、子どもの発見や気づきを待ち、必要最小限の援助に徹する姿勢が大切です。
子どもが主体的に活動できる環境は、探求心や自立心を育み、質の高い保育の実現につながります。
職員の心身を守るメンタルヘルスケア
保育士が心身ともに健康でなければ、質の高い保育を提供できません。
そのため、園として職員のメンタルヘルスケアに積極的に取り組むことが有用です。
定期的なストレスチェックの実施や、臨床心理士などの専門家によるカウンセリングを受けられる体制を整えるといった方法があります。
園長や主任が日頃から職員の様子に気を配り、気軽に相談できる雰囲気を作ることも大事です。
悩みやストレスを1人で抱え込まずに済む環境は、保育士の心の安定につながり、早期離職を防ぐ効果も期待できます。
職員を重んじる姿勢が、結果的に子どもたちへの保育の質を高めます。
働きやすい労働環境の整備
保育の質を維持・向上させるためには、保育士が長期的に安心して働き続けられる労働環境の整備をしなければなりません。
具体的には、サービス残業や持ち帰り仕事をなくし、時間内に業務が終わるような業務分担の見直しがあげられます。
有給休暇を取得しやすい雰囲気作りや、産休・育休からのスムーズな復帰を支援する制度も肝心です。
給与や賞与といった処遇面での改善も、保育士のモチベーションを維持するうえで欠かせません。
職員のワークライフバランスを尊重し、働きがいのある職場を提供することが、優秀な人材の確保・定着につながり、安定した質の高い保育の提供につながります。
保護者との連携を密にする体制作り
保護者との良好な関係は、質の高い保育を行ううえで外せない要素です。
そのために、園として保護者との連携を密にするための体制を整えることが求められます。
日常的な送迎時のコミュニケーションを大切にすることはもちろん、クラス懇談会や個人面談を定期的に開催し、園の方針や子どもの様子を丁寧に伝える機会を設けます。
保護者同士の交流の場も提供し、子育ての悩みを共有できるコミュニティを作ることも、保護者の理解と安心につながるでしょう。
「子育てのパートナー」として尊重し、共に子どもの成長を支えていくという姿勢を示すことが、強固な信頼関係を築き、円滑な園運営の基盤となります。
質の高い保育を実践するためにできる目標設定
保育士個人が質の高い保育を実践するためには、明確な目標設定と継続的な改善が必要です。
自己成長とチーム貢献の両面から目標を設定することで、保育の質向上に貢献できます。
ここでは、目標設定について4つの視点から解説します。
- 自分の保育を振り返り自己評価する
- 明確なキャリアプランを設計する
- チームの一員として貢献する
- PDCAサイクルを活用して改善を継続する
これらの取り組みを実践することで、保育士としての専門性を高められます。
自分の保育を振り返り自己評価する
質の高い保育を実践するための第一歩は、自身の保育を客観的に振り返ることです。
「保育所保育指針」でも、保育士が自らの保育を振り返る自己評価の重要性が示されています。
日々の保育の中で「うまくいったこと」「課題に感じたこと」などを記録し、定期的に振り返る習慣をつけましょう。
たとえば、「今日はAちゃんの気持ちに寄り添った声かけができた」「Bくんのトラブルに冷静に対応できなかった」など、思い返すことが有用です。
これにより、自身の強みや改善点が明確になり、次の目標設定につながります。
明確なキャリアプランを設計する
乳児保育の専門性を深めたいのか、障害児支援に挑戦したいのか、あるいはリーダーとして後輩を育てたいのか。
自身のキャリアプランを長期的な視点で考えることが、日々の目標設定の指針となります。
たとえば「3年後にはクラスリーダーになる」目標であれば、「後輩への指導方法を学ぶ」「保護者対応のスキルを高める」と、短期目標が見えてきます。
キャリアアップ研修の分野を選んだり、園内で特定の役割を担ったりすることもよいでしょう。
目指すべき将来像が明確になることで、日々の業務にも目的意識が生まれ、モチベーションを高く保ちながら成長できます。
チームの一員として貢献する
質の高い保育は、決して1人では実現できません。
個人のスキルアップだけでなく、チーム全体にどのように貢献できるかという視点で目標を設定することも効果的です。
たとえば、「自分のクラスだけでなく、ほかのクラスの状況にも気を配り、手が足りないときは積極的に手伝う」といった目標が考えられます。
チームの一員としてよりよい保育環境作りに貢献しようとする姿勢は、周囲からの信頼を得て、あなた自身の成長にもつながります。
協調性を意識した目標設定を心がけましょう。
PDCAサイクルを活用して改善を継続する
目標を設定したら、それを実行・評価し、改善していくサイクルを回すことが大切です。
これはPDCAサイクル(Plan-Do-Check-Action)と呼ばれ、業務改善の基本的な手法です。
まず目標(Plan)を立て、それを実践(Do)。
次に、実践した結果どうだったかを振り返り評価(Check)し、その結果をもとに改善策を考えて次の行動(Action)に移します。
このサイクルを継続することが、着実なスキルアップにつながります。
転職で後悔しない!質の高い保育を実践する園の見極め方
転職は保育士人生の大きな転機であり、慎重な園選びを行わなければなりません。
ここでは、後悔しない職場選びのために確認すべき4つを紹介します。
- 保育の質への取り組みを確認する
- 園の人間関係や職場環境を確認する
- 研修やキャリアアップ制度を調べる
- 面接で必ず質問する
詳しく見ていきましょう。
保育の質への取り組みを確認する
まずは、園が保育の質向上にどれだけ意識的に取り組んでいるかを確認します。
園のホームページや求人票で、保育理念や方針が具体的に示されているか、ICT導入や業務効率化への言及があるかを調べます。
たとえば「子どもの主体性を尊重」だけでなく、「コーナー保育で子どもの選択を大切にしています」と、具体的な実践内容が書かれているかです。
園見学の際には、子どもたちが自発的に遊んでいるか、保育士が子どもに共感的にかかわっているかなど、自分の目で確かめると安心です。
園の人間関係や職場環境を確認する
転職理由でもっとも多い「人間関係」は、働きやすさを左右します。
園見学の際には、保育士同士が楽しそうに会話しているか、スムーズに連携が取れているかなど、職場の雰囲気を観察してください。
職員室が整理整頓されているか、休憩スペースが確保されているかといった点も、職員を大切にしているかどうかの指標になります。
求人票で「国の基準を上回る手厚い人員配置」や「残業月平均〇時間」といった具体的な記述がある園は、労働環境への配慮が高い可能性があります。
研修やキャリアアップ制度を調べる
自身の専門性を高め、成長し続けられる環境かどうかも見極めポイントです。
園のホームページや求人票に、「園内研修月1回実施」「外部研修参加費用補助あり」など、研修制度に関する具体的な記述があるかを確認しましょう。
どのような研修が行われているのか、キャリアパスはどのように描けるのかが示されている園は、職員の成長を本気で考えている証拠です。
職員の学びを積極的に後押しする制度が整っている園は、保育士を専門職として尊重し、園全体の質の向上を目指しているといえます。
面接で必ず質問する
面接は、自分をアピールする場であると同時に、園を見極めるための情報収集の場でもあります。
給与や休日などの条件面だけでなく、保育の質に関する質問を積極的に行いましょう。
たとえば、「保育の質を高めるために、貴園ではどのような取り組みをされていますか?」といった質問が有効です。
面接官の回答から、園の保育に対する考え方や課題意識が透けて見えます。
「残業時間は月平均でどのくらいですか?」など、働き方に関する具体的な質問も、遠慮せずに行うべきです。
意欲的な質問は、あなたの熱意を示すことにもつながります。
まとめ:保育の質とは何かを理解して理想の職場を見つけよう
保育の質を深く理解することは、ご自身が輝ける理想の職場を見つけるための第一歩です。
「保育のせかい」は、現役の保育士や園の経営者が監修しており、業界のリアルな情報にもとづいた求人のみを提供しています。
アドバイザーの多くが保育士有資格者なので、あなたの気持ちに寄り添ったサポートが可能です。
理想のキャリアを築くために、まずは「保育のせかい」であなたに合った求人を探してみてください。
この記事の監修者

森 大輔(Mori Daisuke)
保育のせかい 代表
《資格》
保育士、幼稚園教諭、訪問介護員
《経歴》
2017年 保育のせかい 創業。2021年 幼保連携型認定こども園を開園するとともに、運営法人として、社会福祉法人の理事長に就任。その他 学校法人の理事・株式会社の取締役を兼任中。
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