公務員保育士とは、地方自治体に採用される公立保育園を中心に勤務する保育士を指します。
安定した給与や福利厚生も魅力ですが、「年収はどのくらいか」「私立との違いは何か」といった疑問を持つ方も多いでしょう。
本記事では、公立・私立の給与水準の違いや年齢・地域・役職別の年収目安、収入アップの方法を解説します。
保育士の働き方を前向きに考えるための参考にしてください。
Contents
公務員保育士とは
公務員保育士とは地方自治体に採用され、公立保育園を中心に勤務する保育士を指します。
ここでは、公務員保育士の勤務先や私立保育士との違いを解説します。
- 公務員保育士が配属される施設
- 公務員保育士と私立保育士の違い
それぞれ見ていきましょう。
公務員保育士が配属される施設
公務員保育士は、おもに市区町村が運営する「公立保育園」に配属されます。
地域や自治体の方針により、以下のような児童福祉関連施設で勤務する場合もあります。
- 児童養護施設
- 乳児院
- 児童発達支援センター
- 保健センター
- 病児・病後児保育施設
- 子育て世代包括支援センター
- 母子生活支援施設
- 障害児のための福祉施設
たとえば、病児・病後児保育施設では、体調不良や回復期にある子どもを一時的に預かる役割を担います。
大阪市では委託事業として、保育士や看護師が連携して保育・看護を行っており、安心して利用できる体制が整えられています。
なお、公務員保育士は人事異動もあるので、複数の施設で勤務経験を積めるでしょう。
公務員保育士と私立保育士の違い
公務員保育士と私立保育士では、以下のような違いがあります。
項目 | 公務員保育士 | 私立保育士 |
雇用主 | 地方自治体 | 社会福祉法人・株式会社など民間運営者 |
給与体系 | 公務員給与規定に基づく(年功序列・安定) | 運営法人によって異なる (実力評価・変動あり) |
福利厚生 | 手厚い | 法人による差が大きい |
勤務の安定性 | 高い | 経営状況により不安定なケースもある |
働き方の柔軟性 | 制度上の制約が多い | 働き方や保育方針の柔軟性がある |
公務員保育士は、安定性や福利厚生を重視する方に適しています。
一方、私立保育士は、園ごとの特色や柔軟な働き方を求める方に向いているでしょう。
公立保育園で働く保育士の給料事情
令和6年度経営実態調査によると、公立保育園で働く保育士の平均月額は、36万6,000円で、年収は439万2,000円(賞与含む)です。
公務員保育士の給与は、地方公務員の給与規定に基づいており、役職・年代・地域ごとに応じて異なります。
- 役職別|公務員保育士の給料
- 年代別|公務員保育士の給料
- 地域別|公務員保育士の初任給
それぞれ詳しく紹介します。
役職別|公務員保育士の給料
公務員保育士は、役職が上がるにつれて給与も大きく変わります。
以下の表は、「令和6年度経営実態調査」で公表されている公立保育所の役職ごとにおける平均月収と推定年収を示したものです。
役職・職種 | 月額給(賞与含む) | 推定年収 |
園長・施設長 | 64万3,192円 | 771万円 |
主任保育士 | 56万4,357円 | 677万円 |
一般保育士 | 36万5,542円 | 437万円 |
※推定年収は「月給×12ヶ月」で概算しています。
参照:令和6年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調|こども家庭庁
一般保育士の年収は400万円程ですが、主任保育士や園長などの管理職になると700万円以上になるケースもあります。
役職に応じて手当も加算されるため、長く勤めれば収入アップも見込めます。
年代別|公務員保育士の給料
公務員保育士の給与は、年齢や勤続年数に応じて徐々に昇給していく傾向にあります。
以下は、大阪市が公表するデータをもとにした年代別の平均月給です。
年代 | 勤続年数 | 平均月給 |
20~29歳 | 0~4年 | 22万1,811円 |
25~34歳 | 5~9年 | 24万4,697円 |
30~34歳 | 10年以上 | 26万6,771円 |
35~39歳 | 10年以上 | 31万439円 |
40~44歳 | 10年以上 | 33万6,075円 |
45~49歳 | 10年以上 | 36万8,693円 |
50~54歳 | 10年以上 | 39万137円 |
55~59歳 | 10年以上 | 37万9,382円 |
参照:令和6年職員の給与に関する報告及び勧告(参考資料その5)|大阪市
とくに40代以降は給与の伸び幅も大きく、長期的な勤務によって安定した給料が期待できるでしょう。
地域別|公務員保育士の初任給
公務員保育士の初任給は、自治体ごとの給与規定や地域手当により差があります。
以下は、令和7年7月時点で各自治体が公表している初任給の例です。
地域 | 大学卒(月額) | 短大卒(月額) |
東京都 江戸川区 | 23万7,600円 | ー |
愛知県 名古屋市 | 25万3,115円 | 22万4,365円 |
京都府 木津川市 | 21万4,544円 | 19万8,538円 |
大阪府 大阪市 | 23万7,800円 | 22万2,836円 |
兵庫県 神戸市 | 25万2,000円 | 22万4,000円 |
※金額は地域手当を含む場合もあります。
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公立保育士と私立保育士の年収の比較
以下に、公立保育士と私立保育士の役職別平均給与と推定年収をまとめました。
運営の種類 | 私立(常勤) | 公立(常勤) | ||
職種 | 平均月給 | 推定年収 | 平均月給 | 推定年収 |
施設長 | 58万354円 | 約696万円 | 64万5,307円 | 約774万円 |
主任保育士 | 47万2,529円 | 約567万円 | 56万2,944円 | 約676万円 |
保育士 | 34万1,468円 | 約409万円 | 36万3,315円 | 約436万円 |
※推定年収は「月給×12ヶ月」で概算しています。
このように、公立保育士の方が各役職において月給・年収ともに高水準です。
とくに主任クラス以上になると、公立と私立の差はさらに広がる傾向にあります。
参照:令和6年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査
公務員保育士になるメリット
ここでは、公務員保育士として働く4つのメリットを紹介します。
- 安定した収入とボーナスがある
- 福利厚生が充実している
- 長期的なキャリアを築きやすい
- 退職金制度がある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
安定した収入とボーナスがある
公務員保育士は地方自治体に雇用されるため、給与は地方公務員の規定に基づき支給されます。
基本給は勤続年数に応じて段階的に上がり、定期昇給も見込めます。
年2回のボーナスも支給されるため、年間収入も安定しやすいでしょう。
令和6年人事院勧告・報告の概要によると、地方公務員のボーナスは月給の約4.6月分です。
収入面での安定を重視する方には、公務員保育士は適した働き方といえます。
福利厚生が充実している
公務員保育士は、社会保険に加えて住宅手当・扶養手当・通勤手当などの各種手当が支給され、福利厚生が充実しているでしょう。
大阪市では住宅を借りている職員に対し、「住居手当」として月額最大3万500円(市外は2万8,000円)が支給されます。
さらに、生後1年6ヶ月に満たない子どもを養育する職員は、1日2回・計90分以内の「育児時間休暇」を取得できる制度もあります。
長期的なキャリアを築きやすい
公務員保育士は、年功序列に基づいた給与体系が採用されているので、安定的に収入が増えていきます。
厚生労働省が推進する「保育士等キャリアアップ研修」では、乳児保育や障害児保育など8つの専門分野に応じた学びも可能です。
研修を修了すれば処遇改善等加算Ⅱの対象となり、給与面での優遇やリーダー的役割を担う道も開けるでしょう。
昇給制度と研修によるスキルアップの両面から、長期的にキャリアを積み上げやすい職場環境が整っています。
退職金制度がある
公務員保育士は地方公務員として勤務するため、地方自治体が定める退職手当制度の対象です。
支給額は勤続年数や最終給与額に応じて算出され、長く勤務するほど高額な退職金が見込めます。
退職金の支給が制度として保障されている点は、公務員保育士の強みといえるでしょう。
さらに、公務員には共済年金や退職後の年金制度も整備されており、老後の生活設計においても安心感があります。
公務員保育士になるデメリット
公務員保育士は、以下のような就職や働き方における制約やデメリットも存在します。
- 就職難易度が高い
- 異動や転勤がある場合もある
- 試験に年齢制限がある
- 副業・ダブルワークなどができない
詳しく解説していきます。
就職難易度が高い
公務員保育士として勤務するには、各自治体が実施する採用試験に合格する必要があります。
試験では筆記・面接・適性検査に加え、自治体によっては実技試験が課されることもあり、総合的な対策が求められます。
たとえば、大阪市の令和6年度保育士採用試験の結果は以下のとおりです。
試験区分 | 採用予定者数 | 申込者数 | 合格者数 | 倍率(概算) |
保育士A(大学卒程度) | 約30名 | 164名 | 65名 | 約2.5倍 |
保育士B(短大卒程度) | 約40名 | 73名 | 34名 | 約2.1倍 |
受験者数が多い自治体では競争が激しくなる傾向にあるので、試験対策と計画的な準備が不可欠です。
異動や転勤がある場合もある
公務員保育士は、地方自治体に属する職員として採用されるため、定期的な人事異動が行われます。
勤務先は公立保育園や児童福祉施設、子育て支援センターなど多岐にわたるため、希望でない部署への配属もあり得るでしょう。
同一市内での異動が中心ではあるものの、ライフスタイルや家庭環境の変化により勤務地の変更が負担になる場合もあります。
安定したキャリアを築ける一方で、勤務地の安定性や柔軟な働き方を重視する方には注意が必要です。
試験に年齢制限がある
公務員保育士の採用試験には、多くの自治体で受験年齢に上限が設定されています。
大阪市の場合、令和7年度の保育士採用試験では受験資格を「昭和60年4月2日から平成18年4月1日までに生まれた方」までとしています。
そのため、応募資格は、おおむね40歳未満が対象です。
自治体によって年齢上限の基準は異なりますが、年齢を重ねるほど応募できる選択肢が限られるため、早めの対策が重要です。
副業・ダブルワークなどができない
地方公務員法により、原則として営利目的の副業や兼業は制限されています。
禁止されている副業を公務員が行った場合、懲戒処分の対象になるので注意が必要です。
ただし、以下のような公益性の高い活動や社会貢献的な業務は、自治体の許可がおりれば兼業が認められるケースもあります。
- 伝統行事や地域イベントの振興に関する活動
- 地域ブランドや地場産品のプロモーション活動
- スポーツや文化芸術活動の指導・支援
営利性が強い事業や、頻度・時間が多いものは原則不可となるので注意しましょう。
公務員保育士になるための4ステップ
ここでは、公務員保育士になるまでの流れを4つのステップで解説します。
- ステップ1|保育士資格を取得する
- ステップ2|希望する自治体の採用試験を確認する
- ステップ3|筆記・面接試験に向けた対策を行う
- ステップ4|合格後、任用と配属を受ける
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ステップ1|保育士資格を取得する
公務員保育士として働くためには、国家資格である「保育士資格」の取得が必須です。
保育士資格は保育士試験に合格するか、厚生労働大臣指定の保育士養成校(短大・大学・専門学校)を卒業すれば取得できます。
保育士試験は年2回実施され、児童福祉施設で「実務経験2年以上かつ総勤務時間2,880時間以上」を満たせば受験可能です。
なお、自治体の採用試験に出願する際は、保育士資格を保有しているか、もしくは取得見込みであることが条件です。
ステップ2|希望する自治体の採用試験を確認する
公務員保育士として働くには、各自治体が実施する採用試験に合格する必要があります。
大阪市の保育士採用試験は、例年1次試験が4月頃、2次試験が8月頃に実施されます。
試験の実施時期や内容、募集人数、年齢制限などは自治体によって異なるため、事前に公式サイトや採用案内で確認しましょう。
ステップ3|筆記・面接試験に向けた対策を行う
公務員保育士の採用試験では、筆記試験・面接試験・適性検査のほかに、実技試験や作文を出題する場合もあります。
筆記試験では、教養試験(一般常識・文章理解・数的処理など)に加えて、保育・福祉分野の専門知識が問われるでしょう。
面接試験では、保育観や志望動機、これまでの経験を論理的に伝える力も求められます。
想定質問への答えを事前に準備し、模擬面接などを通じて実践力を養っておきましょう。
ステップ4|合格後、任用と配属を受ける
採用試験に合格すると、自治体の職員として正式に任用されます。
公立保育園や児童福祉施設、児童発達支援センターなどの自治体が管轄する施設に配属され、保育士の勤務が始まります。
定期的な異動制度がある自治体も多く、長期的なキャリア形成の中でさまざまな現場経験を積むことが可能です。
公務員保育士として働く際の注意点
公務員保育士は、以下のように働くうえで注意しておきたい点もあります。
- 希望する職場を選べない
- 幼稚園教諭免許も受験資格に含まれる場合もある
- 採用の公募が不規則な自治体もある
詳しく解説します。
希望する職場を選べない
公務員保育士として採用された場合、配属先は自治体の人事によって決定されます。
そのため、自身の希望とは異なる保育所や関連施設(児童福祉施設など)に配属される可能性もあります。
定期的な人事異動も行われるため、長期間同じ施設で働き続けることが難しいケースもあります。
自治体にもよりますが、配属先の変更を視野に入れておくとよいでしょう。
幼稚園教諭免許も受験資格に含まれる場合もある
自治体によっては、公務員保育士の募集要項では「保育士資格」に加えて「幼稚園教諭免許状」の保有を条件とする場合もあります。
厚生労働省の指針により、幼保連携型認定こども園が創設された影響から、幼稚園教諭免許を必須として求める傾向にあります。
受験予定の自治体がどのような受験資格を設けているか、事前に募集要項を確認しましょう。
採用の公募が不規則な自治体もある
公務員保育士の採用試験は、自治体ごとに実施時期や募集人数が異なります。
毎年定期的に募集を行う自治体もあれば、人員の補充が必要なタイミングに限って不定期で公募を行うケースもあります。
そのため、希望する自治体の採用情報は定期的にチェックし、試験日程や応募期間を見逃さないように注意が必要です。
保育士として今よりも年収アップさせる方法
ここでは、保育士の収入アップにつながる方法を3つ紹介します。
- 公務員保育士を目指す
- キャリアアップ研修を受講して役職につく
- 待遇のよい職場に転職する
それぞれ見ていきましょう。
公務員保育士を目指す
公務員保育士は、地方自治体に所属する職員として安定した給与体系が整っており、年功序列で昇給していきます。
賞与や退職金、各種手当などの福利厚生も充実しているため、長期的に働けば私立保育士よりも高い年収が見込めます。
収入面で安定を図りたい場合、公務員保育士への転職は有力な選択肢といえるでしょう。
キャリアアップ研修を受講して役職につく
厚生労働省が推進する「保育士等キャリアアップ研修」を修了すると、給与面での優遇を受けられるでしょう。
研修修了後は、副主任保育士や専門リーダーなどの役職に登用されて「処遇改善等加算Ⅱ」の対象となります。
副主任保育士や専門リーダーには月額4万円、職務分野別リーダーや若手リーダーには月額5,000円の手当が支給されます。
現在の職場に勤めながらでも、収入アップを目指しやすいでしょう。
待遇のよい職場に転職する
保育士の給与や待遇は、施設の運営法人や地域によって大きく異なります。
現在の職場で年収アップが難しいと感じる場合は、転職によって改善が図れるケースも少なくありません。
求人サイトなどで比較検討しながら、賞与の支給実績・手当・勤務条件などがよい職場に転職すれば、年収アップに期待できます。
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まとめ|保育士として年収アップを目指すなら「保育のせかい」に相談を
保育士が年収を上げるには、公務員保育士を目指す・役職にステップアップする・待遇のよい職場へ転職する方法があります。
公務員保育士は安定収入も魅力ですが、採用試験に年齢制限がある場合や就職難易度が高い点など、誰にでも適した道とは限りません。
一方、転職は短期間で年収や職場環境を改善しやすく、現実的かつ効果的な選択肢といえるでしょう。
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非公開求人やキャリア相談にも対応しているので、年収アップを本気で考える保育士の方にとって心強い味方です。
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この記事の監修者

森 大輔(Mori Daisuke)
保育のせかい 代表
《資格》
保育士、幼稚園教諭、訪問介護員
《経歴》
2017年 保育のせかい 創業。2021年 幼保連携型認定こども園を開園するとともに、運営法人として、社会福祉法人の理事長に就任。その他 学校法人の理事・株式会社の取締役を兼任中。
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