今の職場を辞めたいけれど、転職に失敗して後悔するのは避けたい。
そう考えて、なかなか一歩を踏み出せずにいる保育士さんは少なくありません。
転職活動は、あなたの今後のキャリアを左右する大切な転機です。
だからこそ、勢いや感情だけで進めるのは避けたいところです。
本記事では、多くの保育士が陥りがちな転職失敗の原因を7つのパターンに分けて解説します。
あわせて、次の職場でいきいきと働くための具体的な対策も5つ紹介します。
失敗例から学び、成功の鍵となるポイントを押さえることが大切です。
ぜひこの記事を参考にして、後悔のない転職活動を進めてください。
保育士が転職を考える理由ランキング
東京都福祉保健局の調査によると、保育士が退職する理由は人間関係や労働条件など多岐にわたります。
転職を検討する前に、まずは多くの保育士が抱える悩みを知ることが大切です。
ここでは、以下5つの理由を見ていきましょう。
- 【1位】職場の人間関係(33.5%)
- 【2位】給料が安い(29.2%)
- 【3位】仕事量が多い(27.7%)
- 【4位】労働時間が長い(24.9%)
- 【5位】妊娠・出産(22.3%)
これらの理由を理解することで、自分の状況を客観的に判断できます。
参考資料:厚生労働省「保育士として就業した者が退職した理由」
【1位】職場の人間関係(33.5%)
保育士が転職を考える最大の理由は職場の人間関係です。
園長や主任との価値観の違い、同僚とのコミュニケーション不足など、さまざまな要因があります。
とくに、保育方針をめぐる対立は深刻な問題となりやすいでしょう。
実際に、ベテラン保育士と若手保育士の間で保育観が異なることは珍しくありません。
子どもへの接し方や行事の進め方など、細かい部分での意見の相違が積み重なると、職場全体の雰囲気が悪くなってしまいます。
人間関係の悩みは1人で抱え込まず、信頼できる同僚や上司に相談するのがおすすめです。
【2位】給料が安い(29.2%)
約3割の保育士が給料の低さを理由に転職を考えています。
責任の重さや業務量に見合った給料をもらえていないと感じる保育士が多くいます。
1人暮らしをしている保育士の場合、家賃や生活費を差し引くと貯金がほとんどできないケースも珍しくありません。
将来の結婚や出産を考えると、経済的な不安から転職を検討せざるを得ない状況に追い込まれます。
処遇改善加算などの制度はあるものの、すべての園で適用されているわけではありません。
より高い給料を求めて、条件のよい園や他業種への転職を視野に入れる保育士が増えているのです。
【3位】仕事量が多い(27.7%)
保育士の仕事は子どもの保育だけではありません。
保護者対応や行事の準備、書類作成など、業務は多岐にわたります。
とくに年度末や行事前は、持ち帰り仕事が増える傾向です。
日々の保育記録や指導計画の作成も大切な仕事です。
しかし、保育時間中はこれらの事務作業をする時間がほとんど取れません。
結果、勤務時間外に作業せざるを得ない状況が生まれています。
仕事量の多さは、保育の質にも影響を与えかねません。
子ども一人ひとりと向き合う時間が減ってしまうと、本来の保育士としてのやりがいも感じにくくなってしまいます。
【4位】労働時間が長い(24.9%)
保育園の開園時間は朝7時から夜7時までが一般的です。
シフト制とはいえ、早番や遅番の負担は大きく、生活リズムが崩れやすいという問題があります。
さらに、行事前の準備や保護者対応で残業が発生することも少なくありません。
労働時間の長さは、プライベートの時間にも大きく影響します。
友人との約束をキャンセルせざるを得なかったり、趣味の時間が取れなかったりすることで、ストレスが蓄積します。
ワークライフバランスを保つことは、長く保育士として働き続けるために欠かせません。
【5位】妊娠・出産(22.3%)
女性が多い保育士にとって、妊娠・出産は避けて通れないライフイベントです。
しかし、人手不足の保育現場では、妊娠中の体調を考慮した勤務体制が整っていないケースも。
重い荷物を運んだり、子どもを抱っこしたりする業務は、妊娠中の身体に大きな負担となります。
産休・育休制度はあっても、実際に取得しづらい雰囲気の職場も存在します。
代替職員の確保が難しいことから、周囲に迷惑をかけるのではないかと感じてしまう保育士も多いでしょう。
出産後の職場復帰についても、短時間勤務制度の有無や、自分の子どもの保育園送迎との両立など、考慮すべき点は多岐にわたります。
保育士の転職で失敗する7つの原因
転職すれば今の悩みから解放されると考えがちです。
しかし、やり方を間違えると新たな後悔を生む可能性があります。
ここでは、多くの人が陥りがちな7つの失敗原因を解説します。
- 給料の額面だけ見て基本給を確認しなかった
- なにを1番改善したいか決めずに転職した
- 求人票の情報だけで応募を決めた
- 今すぐ辞めたい感情で冷静に判断できなかった
- 短期間で転職先を決めてしまった
- 面接で遠慮して労働条件を確認しなかった
- 転職後のキャリアプランを考えていなかった
それぞれ見ていきましょう。
給料の額面だけ見て基本給を確認しなかった
給与の失敗でよくあるのが、求人票の「額面」だけを見て応募してしまうことです。
月給の総額が高く見えても、内訳を細部まで確認する必要があります。
たとえば、固定残業代が含まれている場合、基本給は想定より低いかもしれません。
基本給はボーナスや昇給の基準になるため肝心です。
手当の内訳などを確認しないまま入社すると、思ったより手取りが少ないという事態に陥ります。
なにを1番改善したいか決めずに転職した
今の職場のなにがいやで、転職によってなにをもっとも改善したいのかを決めずに活動を始めるのは危険です。
転職の目的が曖昧なままだと、新しい職場でも同じ不満を抱える可能性があります。
たとえば、人間関係に不満があったのに、給料の良さだけで転職先を決めてしまうとします。
その結果、給料は上がったものの、人間関係がさらに悪化するかもしれません。
転職の軸を定めないと、判断基準がぶれてしまい失敗しやすくなります。
求人票の情報だけで応募を決めた
求人票に書かれている情報は、あくまで魅力的に見せるためのものです。
その情報だけを信じて応募してしまうと、入社後に「話が違う」と感じる原因になります。
たとえば「アットホームな職場」と書かれていても、実際には閉鎖的で人間関係が複雑な場合もあります。
園の公式サイトや口コミサイトをチェックしたり、園見学に行ったりして、多角的に情報を集める手間を惜しまないようにしましょう。
今すぐ辞めたい感情で冷静に判断できなかった
「もう限界だから、今すぐ辞めたい」という強い感情は、冷静な判断を妨げます。
焦って転職活動をすると、十分に情報を集めたり、複数の求人を比較したりできません。
その結果、目の前にあった求人に飛びついてしまい、入社後に後悔するケースは多いです。
つらいときこそ一度立ち止まり、計画的に転職活動を進める冷静さが必要です。
感情的な勢いだけの転職は、失敗の元だと心得ましょう。
短期間で転職先を決めてしまった
早く転職したいという気持ちから、短期間で転職先を決めてしまうのも失敗の原因です。
転職活動を始めると、思ったより早く内定が出ることがあります。
そこで安心してしまい、ほかの園と比較検討せずに承諾してしまうのは危険です。
もしかしたら、さらに条件のよい職場があったかもしれません。
複数の選択肢をじっくり比較し、納得のいく職場を選ぶためにも、ある程度の活動期間は必要だと考えましょう。
面接で遠慮して労働条件を確認しなかった
面接の場で、労働条件に関する質問を遠慮してしまうことも失敗につながります。
給与や残業、休日について尋ねると「印象が悪くなるのでは」と心配になる気持ちは分かります。
しかし、大切な労働条件を確認しないまま入社するのは危険です。
入社後に「聞いていた話と違う」となっても、後の祭りになってしまいます。
面接は、あなたの職場を見極める場です。
勇気を出して、不明な点は必ず質問しましょう。
転職後のキャリアプランを考えていなかった
目先の転職を成功させることだけを考え、その後のキャリアプランを描けていないと失敗につながります。
とりあえず今の職場を辞められればよい、という考えでは長期的な活躍は望めません。
たとえば、数年後に主任を目指したいのか、専門性を高めたいのかで選ぶべき園は変わります。
自分の将来像を考えずに転職すると、新しい職場でキャリアの行き詰まりを感じるかもしれません。
転職は、未来への投資であることを忘れないようにしましょう。
保育士の転職で失敗しないための5つの対策
転職で失敗する原因を理解したら、次は具体的な対策を実践することが大切です。
準備不足や感情的な判断を避け、計画的に転職活動を進めることで、理想の職場に出会える可能性が高まります。
以下5つの対策を順番に実施していきましょう。
- 今の職場のいやな部分を整理する
- 譲れない条件を3つだけ決める
- 面接でネガティブな転職理由を前向きに伝える
- 引き継ぎ資料を作って円満退職する
- 保育士向け転職エージェントに相談する
これらの対策を実践することで、後悔のない転職を実現できます。
今の職場のいやな部分を整理する
転職を成功させる第一歩は、現在の職場のなにがいやなのかを具体的に書き出すことです。
漠然とした不満ではなく、「月の残業時間が40時間を超える」「基本給が15万円で生活が苦しい」など、数字を交えて具体的に整理します。
感情的にならず、客観的に分析することが大切です。
それぞれの不満に対して、自分で改善できることはないか考えてみることも有用です。
不満を整理することで、転職で本当に解決したい問題が見えてきます。
すべての不満を解消することは難しいため、優先順位をつけましょう。
この作業を通じて、次の職場選びの基準が明確になり、同じ失敗を繰り返すリスクを減らせます。
譲れない条件を3つだけ決める
次に、転職先に求める条件の中で「これだけは決して譲れない」というものを3つに絞り込みましょう。
すべての希望を100%叶えてくれる職場を見つけるのは、残念ながら困難です。
そのため、優先順位をつけないと、求人を選ぶ際の判断基準がぶれてしまいます。
たとえば「年間休日120日以上」「残業月10時間以内」「家から30分以内」のように、具体的で客観的に判断できる条件にすることが大切です。
欲張らずに3つに絞ることで、転職活動で迷いにくくなります。
面接でネガティブな転職理由を前向きに伝える
面接では、ネガティブな転職理由をポジティブな言葉に変換して伝えることが大切です。
前職への不平不満ばかりを伝えると、採用担当者に「うちの園でも同じように不満を持つのでは」というマイナスの印象を与えかねません。
たとえば「給料が安かった」という理由は「成果を正当に評価してくれる環境で、より貢献したい」と言い換えられます。
「人間関係が悪かった」は「チームワークを大切にする職場で、協調性を生かして働きたい」と表現できます。
前向きな姿勢は、あなたの意欲を伝える強力なアピールになるでしょう。
引き継ぎ資料を作って円満退職する
円満に退職するためには、丁寧な引き継ぎが不可欠です。
保育業界は意外と狭く、どこで以前の職場の人とつながるか分かりません。
そのため、最後まで責任ある態度を示すことが大切です。
後任の人が困らないよう、担当していたクラスの子どもの情報や保護者対応の注意点、年間行事の進め方などを資料にまとめておきましょう。
分かりやすい引き継ぎ資料があれば、残る職員の負担を減らせます。
立つ鳥跡を濁さずの精神で、感謝の気持ちを持って最終日を迎えることが理想です。
保育士向け転職エージェントに相談する
自分1人での転職活動に不安を感じるなら、保育士専門の転職エージェントに相談するのも有効な手段です。
転職エージェントは、一般には公開されていない「非公開求人」を多数保有しています。
また、保育業界に特化したキャリアアドバイザーが、客観的な視点であなたに合った求人を提案してくれます。
職場の雰囲気といった内部情報に詳しいため、求人票だけでは分からないリアルな情報を得られるのも大きなメリットです。
面接対策や給与交渉の代行など、心強いサポートも受けられます。
まとめ:保育士の転職で失敗を防ぐ鍵は自己分析と準備
保育士の転職で失敗しないためには、事前の準備と冷静な自己分析がなによりも大切です。今の職場の不満点を整理し、転職先に求める譲れない条件を明確にしましょう。
しかし、1人で理想の職場を見つけるのは簡単ではありません。
そのようなときは、保育士・幼稚園教諭のための求人サイト「保育のせかい」がお力になります。
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まずはサイトで求人を探したり、LINEで気軽に相談したりすることから始めてみてはいかがでしょうか。
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この記事の監修者

森 大輔(Mori Daisuke)
保育のせかい 代表
《資格》
保育士、幼稚園教諭、訪問介護員
《経歴》
2017年 保育のせかい 創業。2021年 幼保連携型認定こども園を開園するとともに、運営法人として、社会福祉法人の理事長に就任。その他 学校法人の理事・株式会社の取締役を兼任中。
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