保育士として働いていると、職場環境や待遇、人間関係などの問題から
「転職しようかどうか」
と悩むこともあるでしょう。
しかし、焦って決断すると、かえって悩みが増えたり、環境が大きく変わることで思わぬトラブルを招く可能性もあります。大切なのは、自分の状況を客観的に見つめ直し、しっかりとした目標や条件を持って転職活動を進めることです。
本記事では、保育士が転職を考える際に押さえておきたいポイントや、転職するメリット・デメリット、さらに失敗を防ぐためのアドバイスを紹介します。転職を悩んでいる保育士の方が「より良い働き方」を手に入れるために、ぜひ参考にしてみてください。
Contents
保育士が転職を悩んだ際に確認しておきたいポイント
転職を考えているものの、実際に行動に移すかどうか迷う保育士の方は多いでしょう。
以下のポイントを確認することで、転職の必要性や適切なタイミングを把握しやすくなります。
①転職の目的を明確化する
一番重要なのは「なぜ転職したいのか」をはっきりさせることです。給与アップや待遇改善、人間関係の悩み解消など、目的を具体的にすることで、転職先の選択基準が明確になり、ブレにくくなります。
②転職を迷っている理由を確認する
転職を考える一方で
「本当に辞めて大丈夫なのか」
「環境を変えても同じ悩みを抱えるのではないか」
という不安がある場合もあります。具体的に何が原因で迷っているのか、現職で解決できないのかを冷静に分析し、可能なら上司や同僚に相談して改善の余地を探ることも大切です。
転職するかどうか迷う際の判断基準
転職を決断する前には、いくつかの判断基準を持って現状を見極めることが重要です。
ここでは、在籍期間・職場環境・待遇・給与・残業の5つの視点を挙げます。
在籍期間
在籍期間が短すぎると「根気がない」と評価される可能性があるため、最低でも1年以上は勤めるのが望ましいとの声が多いです。逆に、長期間勤めているのに悩みが解消されない場合は、思い切って環境を変える決断も必要です。
職場環境
人間関係や職場の雰囲気、保育方針への共感度などが、保育士のモチベーションに大きく影響します。もし厳しい人間関係に疲れ果てているなら、転職によって改善できる可能性があります。
一方で、異動や部署変更で解決する場合もあるため、合わせて検討しましょう。
待遇
保育士の待遇には、休暇制度や福利厚生などが含まれます。たとえば、有給休暇の取得しやすさや産休・育休の取りやすさなども重要な要素です。
現職でこのような制度が整っていないなら、転職先でより良い環境を探す動機になるかもしれません。
給与
保育士は、他業種と比べて給与水準が低いと感じる方が少なくありません。生活に支障をきたすほど低い給与であれば、転職による収入アップを視野に入れるのも合理的です。ただし、給与だけを目的に転職する際は、そのぶん業務負担も大きくなる可能性がある点を考慮しましょう。
残業
行事準備や書類作成が多く、サービス残業が日常化している職場も存在します。残業が多いとプライベートとの両立が難しくなり、心身の負担も大きくなるため、残業体制に疑問がある場合は転職を検討するきっかけとなるでしょう。
保育士が転職するメリット
転職を決意し、新しい職場に移ったことで得られるメリットはさまざまです。
以下では、主なメリットを3つに絞って紹介します。
メリット①悩みが改善される可能性がある
人間関係や保育方針の違いなど、現職での悩みを解消できる職場に移ることができれば、大きなストレスから解放され、保育に専念できるでしょう。ただし、事前に職場の情報収集をしっかり行わないと、同じ悩みを繰り返すリスクもある点に注意です。
メリット②自分に合った環境で働ける
園の方針や規模、保育スタイルなどは多種多様です。たとえば、子どもの主体性を重視する園や自然保育を実践している園など、興味のある分野にチャレンジできる職場を選ぶことが可能です。
自分の得意分野や理念にマッチした職場で働けることで、やりがいが高まります。
メリット③前向きな気持ちで働ける
新しい環境では、新たな仲間や刺激を得て、仕事へのモチベーションが再燃することがあります。
保育士としてのキャリアアップにつながる研修制度や、サポート体制の充実を期待できる職場を探せば、より前向きな気持ちで働けるでしょう。
保育士が転職するデメリット
一方、転職にはリスクやデメリットも存在します。
これらを踏まえたうえで、転職するメリットと天秤にかけることが重要です。
デメリット①転職が難航する可能性がある
保育士の求人は多いものの、地域や条件によっては希望に合う職場が見つかりにくい場合もあります。
待遇や保育方針など理想を求めすぎると、なかなか応募先が見つからず、転職活動が長期化することが考えられます。
デメリット②職場を変えても悩みは変わらない可能性がある
前職の悩みの原因が自身の働き方やコミュニケーションにあった場合、転職先でも類似の問題に直面するかもしれません。
転職前に自分自身の課題を振り返り、克服に向けた努力が必要です。
転職をスムーズに行うためのコツ
転職活動は、現職との両立や情報収集など、時間も手間もかかる作業です。
以下のコツを押さえておくと、スムーズに進めやすくなります。
在職しながら転職活動を進める
収入が途絶えるリスクを避けるためにも、退職前に次の職場を決める方法が一般的です。業務時間外や休日を活用して転職サイトやエージェントを利用し、効率的に求人を探すと良いでしょう。
転職エージェントに相談する
保育士専門の転職エージェントを活用すると、非公開求人の紹介や、職場の実情などの内部情報を得やすいです。また、履歴書や面接対策などもサポートしてもらえるため、活動が初めての方や忙しい方に適しています。
転職フェアに積極的に参加する
一度に複数の保育園や企業の担当者と直接話せる場として、転職フェアは有益です。現場の雰囲気や具体的な業務内容などを直接聞くことができ、ネットだけでは得られない情報を収集できます。
保育士が転職を失敗する理由
転職の失敗例を事前に知っておくことで、同じ過ちを回避しやすくなります。ここでは、6つの代表的な失敗要因を挙げます。
①給与面を一番に重視していた
給与アップだけを理由に転職すると、業務負担の増加や勤務条件の厳しさに適応できない場合があります。給与と同時に、職場環境や保育方針にも目を向けることが大切です。
②転職理由が曖昧だった
明確な目的や課題意識がないまま転職すると、次の職場で同じ悩みを抱える恐れがあります。転職活動中の面接でも説得力に欠ける可能性があるため、理由をしっかり言語化しましょう。
③焦って決めてしまった
短期間で内定を得ようと急いだ結果、十分な情報収集をせずに職場を選び、入社後にミスマッチが発覚するケースです。
特に人間関係や保育理念などの見極めが不十分だと後悔に繋がりやすいです。
④深く調べずに判断してしまった
求人情報やホームページだけでなく、園の評判や雰囲気は実際に足を運んで確かめるのが望ましいです。下調べを怠ると、入社後に想定外の苦労を強いられるかもしれません。
⑤転職をゴールにしていた
転職自体が目的化してしまい、新しい職場でのキャリアアップや保育内容の充実など、長期的な視点を見失う人もいます。転職はあくまで手段であることを再認識し、就職後のビジョンを持ちましょう。
⑥保育園を選ぶ際の基準が曖昧だった
立地や給与、勤務時間などの条件が揃っていても、自分の保育方針や専門性に合わない園だと、長続きしない可能性があります。どのような保育環境を望んでいるのか、基準を明確化しておくことが重要です。
転職を成功させるためのポイント
転職失敗のケースを踏まえ、成功に導くためにはいくつかのポイントを意識する必要があります。
以下では、5つの具体的なポイントを紹介します。
ポイント①転職する目的や条件を明確にする
キャリアアップを目指すのか、待遇改善を狙うのか、人間関係のストレスから解放されたいのかなど、目的をはっきり定めると、求人選択の際に比較検討しやすくなります。
ポイント②スケジュールに余裕をもって転職活動を進める
在職中に転職活動をする場合、急ぎすぎると応募や面接の日程調整が難しく、情報収集も不十分になる恐れがあります。1〜3ヶ月程度の余裕をもって計画的に進めると良いでしょう。
ポイント③ホームページや保育園見学で情報を集める
求人票だけではわからない現場の雰囲気や理念、保育士同士のコミュニケーションなどを把握するには、見学や面談が大切です。複数の園を比較することで、より納得のいく選択が可能です。
ポイント④給与面は具体的に確認する
給与の額面や手当だけでなく、ボーナスや昇給制度、残業代の支給形態などを詳細にチェックしましょう。試用期間中の待遇が異なる場合もあるため、入職前に書面や面談で確かめるのが基本です。
ポイント⑤判断に迷ったら第三者に相談する
家族や友人、同僚など、客観的な視点を持つ人に意見を求めると自分の思考の偏りや不足点に気づけるケースがあります。また、転職エージェントやキャリアカウンセラーに相談するのも一つの方法です。
ほかの業界に転職すべき保育士の特徴
必ずしも保育業界内での転職だけが選択肢とは限りません。保育士としてのスキルを活かしながら他業界へ活路を見出す人も増えています。以下の特徴が当てはまる人は、異業界への転職も検討する価値があるでしょう。
①保育士としての残業が辛い人
行事の準備や書類作成で夜遅くまで残業しがちで、心身ともに疲弊している場合は、残業が少ない異業種への転職を考えるのも手です。子どもと関わる仕事に未練があっても、健康を損なっては本末転倒です。
②人間関係がうまくいかない人
保育士同士、保護者とのコミュニケーションがストレスとなる人は、接客業や事務職など別のコミュニケーションスタイルの仕事で力を発揮できるかもしれません。保育経験で培ったコミュ力やマルチタスク能力は他業種でも評価されやすいです。
違う園に転職すべき保育士の特徴
保育士としては続けたいが、現在の職場に不満がある場合は、同業種内での転職が有力な選択肢となります。
以下のような状況に当てはまる方は、思い切って別の園に移ることで環境改善が期待できます。
①今の園の雰囲気が好きではない
職場の人間関係や保育方針が合わず、毎日がストレスフルになっているなら、同じ仕事を続けつつ園を変えるのも賢明な判断です。
園によって取り組みや風土が大きく異なるため、自分に合った職場を探しましょう。
②子どもが好き
どんなに仕事がきつくても「子どもに関わりたい」という思いが強いなら、保育士としてのキャリアを別の園で活かす道があります。転職先で働きやすい体制や理念を持つ園を選べば、モチベーションを取り戻せる可能性が高いです。
転職すべきかどうかを冷静に判断してから転職活動を始めよう
保育士が転職を悩む際は、まず転職理由や現職の課題を整理し、どのような環境を求めるかを明確にすることが重要です。職場環境や給与、残業、在籍期間などの判断基準をチェックし、転職するメリットやデメリットを比較しながら検討しましょう。
スムーズな転職活動を行うには、在職中に計画的に進めたり、転職エージェントやフェアを活用する方法が効果的です。失敗例としては、給与だけを最優先にしたり、曖昧な理由で決断してしまうと、同じ問題を繰り返す可能性があります。転職を成功させるためには、目的や条件を明確にし、スケジュールや情報収集にも余裕をもって取り組むことがポイントです。 また、保育士の経験を活かしながら他業界への転職を検討したり、同じ保育業界でも別の園での勤務を試みる方法も選択肢としてあります。もし現職での悩みが深刻化している場合や、キャリアアップを図りたいと思うなら、新天地での可能性を追求するのも一案です。
保育のせかいでは、保育士の転職やキャリアに関する情報を提供していることに加え、キャリア相談にも乗らせていただいています。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。
この記事の監修は
保育のせかい 代表 森 大輔
2017年 保育のせかい 創業。保育士資格・訪問介護員資格を保有。2021年 幼保連携型認定こども園を開園するとともに、運営法人として、社会福祉法人の理事長に就任。
その他 学校法人の理事・株式会社の取締役を兼任中。
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