保育士の持ち帰り仕事は、多くの保育者にとって大きな負担となっています。
子どものお世話や保護者対応だけではなく、指導計画の作成や行事準備、制作物の作成など多岐にわたります。
保育士は日々、子ども達の成長を見守りながら、多くの業務をこなさなければいけません。
業務の効率化が進んでいない職場や、業務量が多い場合、持ち帰り仕事が増えることがあります。
勤務時間内にすべての業務を終えることが難しくなると、自宅で作業を続ける持ち帰り仕事が、発生するケースも少なくありません。
持ち帰り仕事が頻繁にあると、保育士のプライベートの時間が減少し、ストレスが増加することが懸念されています。
今回は、保育士の持ち帰り仕事が減らない理由や、減らす工夫と対策などについてお伝えしていきます。
Contents
保育士によっては持ち帰り仕事が減らない職場も
保育士によっては持ち帰り仕事が減らない職場もあります。
保育士の持ち帰り仕事は、勤務する職場の方針や規模、業務の分担状況によって異なってきます。
例えば、経営主体が効率化に積極的でない、行事が多い職場などでは、持ち帰り仕事が常態化していることが少なくありません。
週に1回以上、持ち帰り仕事をしている保育士も多いでしょう。
一部の保育園では、業務効率化や分担が進んでいるため持ち帰り仕事が少ない場合もありますが、多くの現場では依然として持ち帰り仕事が日常的です。
行事前や年度末など、繁忙期には業務量が増えて、時間内に終わらせることが難しい状況が続いています。
多くの保育士が勤務時間外にも、業務を続けている現状が浮き彫りになっています。
保育士の持ち帰り仕事が減らない理由は?
保育士の持ち帰り仕事が減らない背景には、いくつかの要因があります。
・業務量そのものが膨大
・保育士不足
・業務の効率化が進んでいない
業務量の多さに関しては、子どもの保育に加え、指導計画の作成や保護者対応、行事準備、制作物の作成など多岐にわたる業務を限られた時間内でこなすことが求められています。
しかし、日中は子ども達に付き添う時間が優先されるため、事務作業や準備作業に割ける時間が不足しがちです。
人員不足も大きな問題です。
国の基準通りに保育士を配置している場合でも、書類作成やその他の業務を勤務時間内に終えるのは難しい現状があります。
業務効率化が進んでいない職場は、効率良く仕事が進まないため、残業や持ち帰り仕事が発生しがちになってしまいがちです。
持ち帰り仕事が当たり前という職場の文化も影響しています。
先輩や上司がそのような働き方をしている場合、新人保育士も同じように行動せざるを得ないと感じてしまうことがあります。
保育士の持ち帰り仕事は残業代は支給される?
持ち帰り仕事に対する残業代については曖昧な部分があります。
上司から指示された場合には残業代が支払われることがありますが、自主的に持ち帰った場合には支給されないことが一般的です。
自主的に行った場合には、サービス残業とみなされたり、上司が気づかなかったりなどで残業代は無給になってしまうケースもあります。
保育士によっては、無給で時間外労働を行っていて、不公平感やストレスを感じています。
労働基準法では、1日8時間、1週40時間を超える労働には割増賃金を支払う義務がありますが、現場では持ち帰り仕事がサービス残業として扱われるケースも少なくありません。
職場側が正確に労働時間を把握していないことや、人件費削減のために残業代を出さない方針であることなども、原因としてあるでしょう。
保育士に関連する記事はこちら⇒保育士はサービス残業と休憩なしが当たり前?残業内容ややりがい搾取について
保育士の持ち帰り仕事による影響は?
持ち帰り仕事は保育士自身や、周囲にも様々な影響を及ぼします。
プライベートな時間が削られることで、心身ともに疲労しやすくなります。
健康状態を崩したり、家庭生活への悪影響も生じたりする可能性もあるでしょう。
子ども達への影響も懸念されます。
疲れが溜まると翌日の保育業務への集中力低下や、モチベーション低下にも繋がります。
自宅で過ごすべきリラックスした時間を削られることで、疲労やストレスが蓄積して、最悪の場合には離職に繋がるかもしれません。
持ち帰り仕事は、個人情報を自宅へ持ち出すことによるセキュリティリスクも見逃せません。
書類には子どもの名前や写真などの個人情報が含まれているため、紛失や情報漏洩という重大な問題に繋がる可能性があります。
保育士の持ち帰り仕事を減らす工夫について
保育士の持ち帰り仕事を減らす工夫をお伝えしていきます。
ICTの活用
保育士の持ち帰り仕事を減らすためには、ICTの導入が有効です。
ICT技術を活用できれば、作業効率を向上させることができます。
書類作成の簡素化や情報共有の円滑化により、残業時間の削減や持ち帰り仕事の防止に大きく役立つはずです。
例えば、日誌や連絡帳などの書類作成をデジタル化することで、作業効率が大幅に向上します。
ICTシステムではテンプレートを活用し、日付や園児の情報を自動入力する機能が備わっているため、手書きで行う手間が削減されます。
ICTの活用で保育士の事務作業にかかる時間が、大幅に短縮され子ども達と向き合う時間の確保に繋がるはずです。
業務分担の見直し
業務分担を見直すことも重要なポイントです。
保育士一人ひとりが抱える業務量を適切に調整するために、職員間で公平な業務分担を実施することで、一人当たりの負担軽減に繋がります。
例えば、制作物や事務作業などは、保育補助スタッフに任せるなどの工夫が考えられます。
業務の優先順位を明確にして、協力体制を構築することで作業の分担がしやすくなります。
職員間で得意分野を活かした分担を行うことで、効率的に業務を進められるでしょう。
効率的な業務遂行のために、子ども達の活動中や休憩時間を利用して文書作成を行うなど、時間を有効活用することで、持ち帰り仕事の削減に繋がります。
業務フロー全体を見直して、無駄な手続きや重複作業を削減することも効果的です。
このような取り組みによって、保育士が本来注力すべき保育業務に集中できる環境づくりが進みます。
スキマ時間の活用
日々の保育活動の中で発生するスキマ時間を、有効活用することも効果的です。
例えば、子ども達が自由遊びをしている時間や昼寝中などに、簡単な事務作業や資料整理を行うことで、大きなタスクを後回しにせず進めることができます。
一部作業を勤務時間内に終わらせられるように工夫が大切です。
このような工夫によって勤務時間内で、多くの作業を終わらせられて、持ち帰り仕事の発生を抑えることに繋がります。
ただし、安全管理には注意する必要があります。
働き方の改善への取り組み
持ち帰り仕事が過度になる場合は、上司への相談や業務の見直しが必要です。
例えば、保育補助者の採用を提案したり、得意分野に応じた業務の割り振りを依頼したりすることで、職場全体の効率化を図れます。
事務作業に集中できる時間を確保したり、有給休暇取得率向上や残業時間削減といった取り組みをしたりも良いでしょう。
保育士の持ち帰り仕事を減らす対策は、職場全体で働き方改革に取り組むようにすると、長期的な効果に繋がります。
職場全体で働きやすい環境づくりを進めることで、保育士一人ひとりが効率的に業務を遂行できるようになります。
デジタル化への取り組み
保育士の持ち帰り仕事は、多くの保育士にとって大きな負担です。
ICT導入によるデジタル化は、書類作成だけではなく職場全体の運営効率に影響を及ぼします。
例えば、登降園管理や指導計画書作成なども、システム上で簡単に行えるようになり、多くの時間と労力が削減されます。
ICT導入だけではなくペーパーレス化や、オンラインツール活用によって作業効率化を進めることも重要です。
新たなシステム導入時には、職員向け研修会などを実施して、操作方法への不安を解消することも大切です。
役職者や園長先生への相談と環境改善
現状改善には上司への相談も有効です。
過度な持ち帰り仕事が続く場合は、園長先生や役職者へ相談し現状改善を図ることがおすすめです。
具体的な提案とともに問題点を共有することで、環境改善に繋がる可能性があります。
例えば、制作物の簡略化や、ICT導入による効率化といった提案のように、具体的な提案とともに現状報告を行うことで、より建設的な話し合いができ説得力があります。
役職者や園長先生への相談と環境改善は、職場全体で働きやすい環境づくりにも繋がるでしょう。
保育士の持ち帰り仕事が少ない職場に転職するのもあり
現在の職場環境で改善が難しい場合は、持ち帰り仕事が少ない職場への転職も選択肢として考えられます。
例えば、公立保育園や企業内保育園ではイベント数が少なく、計画的な運営が行われているため、持ち帰り仕事が少ない傾向があります。
持ち帰り仕事なしを明確に掲げている求人情報も増えているため、自分に合った環境を探すことがおすすめです。
実際に持ち帰り仕事を制限している保育園も存在するため、求人情報をよく確認することで、よりストレスの少ない職場環境を見つけやすくなります。
このような環境ならば、プライベートとの両立もしやすくなるでしょう。
派遣保育士として働くことで主担任にならず、補助的役割のみ担当できるため、大幅に負担軽減できる可能性があります。
転職活動では求人情報だけでなく、職場見学などで実際の雰囲気や運営方法を確認すると良いでしょう。
転職活動は、自身のワークライフバランス改善にも繋がります。
ICT活用、業務改善、環境整備、そして必要に応じた転職検討など、複数の観点から対策を講じることで、保育士の持ち帰り仕事の効果的な削減が可能です。
まとめ
保育士の持ち帰り仕事は、指導計画やクラスだよりの作成、行事用の制作物などが中心で、多忙な業務環境が要因となっているのです。
このような状況を改善するためには、業務の効率化や分担、ICTシステムの活用が鍵となります。
保育士として働いているけれど、持ち帰り仕事や残業をたくさんしている人はたくさんいるはずです。
保育現場はチームワークが求められる仕事ですから、自分一人だけ仕事を早く終わらせても、なかなか定時で退勤しづらい状況ですよね。
勤め先で職員や園長先生に相談できたらしてみましょう。
すぐには残業や持ち帰り仕事などを減らすといった、職場の労働環境の改善は難しいかもしれません。
徐々に持ち帰り仕事を減らし、自宅ではしっかりと休息を取ることで、心身の健康を保ちながら働き続けられる環境づくりを目指しましょう。
この記事の監修は
森 大輔
保育士資格・訪問介護員資格を保有。2021年 幼保連携型認定こども園を開園するとともに、運営法人として、社会福祉法人の理事長に就任。
その他 学校法人の理事を兼任中。
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