保育士不足が進むなか多くの保育園や保育施設では、非正規労働者を雇い正社員の負担を軽減できるように努めています。
非正規労働者の雇用形態は色々ありますが、パート保育士について注目してみましょう。
パート保育士の仕事は主に正社員のサポート業務になり、保育補助という位置づけです。
保育士資格の有無は関係ありません。
保育士資格を取得している人は、パート保育士でも正社員と変わらない保育業務を行えますが、保育士資格が無い人は保育補助の仕事に徹することになります。
正職員よりもワークライフバランスを調整しやすいため、仕事と私生活をきっちりと分けたい人におすすめです。
今回は、パート保育士を採用したら正職員は必要ないのかや、全員パート化の懸念点をお伝えしていきます。
Contents
パート保育士を採用したら正職員は必要ない?
保育園や保育施設では正社員の保育士が常勤していますが、職場の全員が正規雇用労働者というわけではありません。
多くの職場では正規雇用と非正規雇用の両方を行っています。
職場側が意図的に正社員と非正規社員の両方を採用しているというよりも、国によって認可保育園・認定子ども園を運営するにあたって保育士の配置基準が定められているからです。
保育園に必要な保育士配置基準とは、認可保育園・認定子ども園の運営では受け入れる子どもの年齢や人数によって、保育士の人数は最低何人以上を配置しなければいけないという基準が決められています。
受け入れる子どもの数がどれだけ少なくても、正社員の保育士は最低2名は確保しなければいけないのです。
そのため、パート保育士などの非正規社員を採用するなら、必ず正社員も常勤させる必要があります。
しかし、保育園や保育施設の職員全員を正職員にするのは、職場側に大きな負担がかかります。
正職員の保育士を雇うとボーナスの支給や社会保険といった待遇面や福利厚生、長時間労働の問題などにより経営側からすると負担が大きくなり、最悪の場合は経営危機に陥る恐れがあるため現実的ではないのです。
パート保育士を採用する保育園は多い?
世の中の多くの保育園や保育施設ではお伝えしてきたように、正社員と非正規社員の両方の人材を雇用しています。
非正規社員の労働力のお陰で、正社員の保育士の負担が大きく軽減できています。
ただし、パート保育士の採用は職場によって割合は変わってきます。
なぜなら、職場の規模や労働環境、経営状況などに違いがあるためです。
特に、認可保育園は国からの補助金が職員の給料として反映されているため、勝手に職場の経営者は賃金の金額を決められません。
国からの補助金の範囲で保育園の運営や保育士の給料を、上手くコントロールしていくことが求められます。
そのため、資金繰りに悩んだり人件費削減を意識したりしている職場では、パート保育士を多く採用して正社員の保育士の人数が少ないところもあります。
非正規社員の労働力はこれ以上、保育業界の人手不足が深刻化しないためにも重要な役割を担っているのです。
パート保育士を採用したらフルタイム勤務する人は多い?
パート保育士になる人は、仕事よりもライフスタイルを重視している人もたくさんいます。
世間的にもパートタイマーで働く人は、短時間勤務というイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。
時間の融通が利きワークライフバランスを調整しやすい働き方が、パート労働者の大きな魅力ですからパート保育士の多くが短時間勤務を望んでいます。
ただし、1日8時間のフルタイム勤務を希望するパート保育士も少なくありません。
一般的には、パート保育士は短時間勤務を希望する人が多いため、フルタイム勤務をする人がとても多い状況というわけではありません。
正社員と同じようにフルタイム勤務をするパート保育士ですが、基本的に時給制で働いているため、時短勤務への変更や休暇の取得などはしやすいと言えるでしょう。
パート保育士を採用する必要性
パート保育士は正社員のサポートをする役割を担います。
クラス担任の保育士が出勤できない時に、サブ担任として担任の業務をサポートしたり、子どもの生活サポートや遊びの準備を行ったりします。
担任を持たないフリー保育士として各クラスの行事や、正社員の保育士の配置に合わせて、柔軟に手助けできるので頼りになるはずです。
フルタイムで働くことが難しい保育士にとっても、キャリアを継続しながら家庭と仕事のバランスを取れるので、パート保育士に切り替えられるのは助かる人もいるでしょう。
職場側はパート保育士を含め非正規労働者を採用すると、必要な時間だけ人員を確保することができ経費を抑えられます。
パート保育士の採用は人件費削減に繋がる
近年では、保育士を含めビジネスパーソンの働き方が多様化している時代です。
保育業界でも保育サービスが複雑化したり、子どもを預けるママやパパの家庭で共働きをするところが増えたりしており、職場によっては夜間や早朝に対応するところも少なくありません。
多様化した保育サービスや保護者の要求に応えるためには、保育園や保育施設は臨機応変な対応が求められます。
短時間勤務が可能なパート保育士や非正規労働者を増やせば、臨機応変な対応が可能になりますし人件費削減にも繋がります。
パート保育士の採用で正職員に負担がかかる可能性も
パート保育士の採用は、正職員に負担をもたらす可能性もあります。
例えば、新たに採用したパート保育士の教育や研修に正職員が時間を割く必要があったり、あくまで保育補助で行える仕事の範囲でしか保育業務に携われなかったりするからです。
また、勤務時間が短いとかパート保育士が不定期なスケジュールで働く場合、そのスケジュールの調整により正職員の業務が増える可能性もあります。
パート保育士では日常業務や子ども達の生活サポートにおいて、正職員と同じような貢献は難しくなってしまいます。
パート保育士を採用する際には、正職員とパート保育士が協力して働ける環境を整えることが重要です。
保育士の採用で全員パート化がダメな理由
全員がパートタイムで働くと、保育士の職業自体の価値が低下する可能性もあります。
例えば、パートタイムの保育士がクラス全体の責任を持つことに対して、保護者によっては不安を抱く人もいます。
短時間勤務をするパートタイムの保育士が頻繁に変わることで、子供達の安心感が損なわれたり、十分なケアをしたりできるのかなどを心配しているからです。
パートタイムの保育士が正社員と同じ仕事量を担当する場合、不満が生じる可能性もあるでしょう。
正社員と同じ業務をしているのに待遇や雇用条件が異なるため、パート保育士のストレスになる可能性があるからです。
パート保育士と正職員のチームワークが業務の円滑化には大切です。
コミュニケーション不足や人間関係が悪くなると、業務に支障をきたすので注意しなければいけません。
保育園や保育施設がパート保育士を採用する際には、正職員とパート保育士が協力して働ける環境を整えることが重要です。
保育士の採用で全員パート化の懸念点
保育士の採用で全員パート化の懸念点をお伝えしていきます。
保護者からの不安
保育士が全員パートタイムで働くと、保護者は子どもが毎日違う保育士に面倒を見てもらうことになると思い、不安を抱えるかもしれません。
保護者は子どもが安定した環境で育つことを望んでいます。
パートタイムの従業員はシフトが変わる可能性があります。
子ども達が同じ保育士と長期間にわたって関係を築いたり、一貫した生活サポートを受けたりなどが難しくなってしまうのです。
子どもへの保育の質が低下する恐れがある
全員がパートタイムで働く体制では、フルルタイムの保育士と比べて研修の機会が少なくなり、子どもへの保育の質が低下する恐れがあります。
例えば、新しい教育法の研修があった時に、ライフスタイルを重視するパートタイムの保育士は研修に参加できないかもしれません。
また、パートタイムの保育士は、フルタイム勤務の保育士と比べて経験やスキルが不足している可能性もあります。
正社員並みの仕事量になると不満がでる可能性がある
パートタイムの保育士が正社員並みの仕事量を求められる場合、フルタイムで働きたい気持ちがない人は納得がいかないかもしれません。
パートタイムなのに、なぜフルタイム並みの仕事をしなければならないのかと不満が出る恐れがあります。
労働条件の不公平感を生み出し職場の雰囲気の悪化に繋がって、保育の質の低下を招く可能性があるでしょう。
保育士全体の給料が低くなる恐れがある
パートタイムの保育士は、フルタイムの保育士と比べて給料が低い傾向にあります。
一般的には、時給制で働き勤務時間が短いためです。
全員パートタイム化により、保育園や保育施設の経営者は人件費を削れると考えて、給料を引き下げようとするかもしれません。
人件費のカットを重視した経営者が多くなってくると、保育士の給料が全体的に低下する恐れがあります。
まとめ
保育士不足は日本の多くの地域で深刻な問題となっています。
全国的に保育士不足は進んでいますが特に、都市部や人口が多い地域では待機児童数が増加しているため、保育士自体の需要は無いとは言えません。
パート保育士の採用は保育士不足を緩和する効果が期待できたり、保育の質を維持するために重要な役割を果たしたりしています。
パート保育士はフルタイムの保育士が不足している場合や、ピーク時の保育需要に臨機応変に対応できるようにするために必要と言えるでしょう。
保育士資格を持っている人で未経験やブランクがある人は、まずはパート保育士や非正規社員として働くのも良いですね。
保育士資格を取得していない人であれば、パート保育士として保育補助の仕事をしながら、実務経験を積み正社員を目指してみてはいかがでしょうか。
この記事の監修は
保育のせかい 代表 森 大輔
2017年 保育のせかい 創業。保育士資格・訪問介護員資格を保有。2021年 幼保連携型認定こども園を開園するとともに、運営法人として、社会福祉法人の理事長に就任。
その他 学校法人の理事・株式会社の取締役を兼任中。
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