近頃、保育園で園児が食べ物を喉に詰まらせたりする事故が報道されています。
こういった事故を未然に防ぐことは大事ですが、実際に発生した後に適切な対処ができるかどうかが大事です。
今回は、保育士必見!現場での「気道異物の除去法」について、認定こども園で働く看護師が解説していきます。
※保育士だけでなく、育児中の保護者の方にも有益な記事となっているので是非最後まで読んでみてください。日本医師会のホームページにも細かく記載があります。
Contents
気道異物による窒息(ちっそく)とは?窒息の発見
「気道異物による窒息」とは、例えば食事中に食べ物が気道に詰まるなどで息ができなくなった状態をいいます。
そして、いち早く窒息に気づくことが大事です。
親指と人差し指で、のどを掴むような仕草は、「窒息のサイン」と呼ばれています。
小さい園児は、窒息をしていることを自覚しないこともあり、必ずしもこういった仕草をするわけではないのでご注意ください
○反応がある場合
呼びかけに応じることができる場合の対処方法です。
※反応がない場合の対応は、この次に記載します。
異物除去には、腹部突き上げ法(ハイムリッヒ法やハイムリック法と呼ばれています)と背部叩打法がありますが、小さい子どもには、背部叩打法を行います。(※腹部突き上げ法は行わないようにしましょう)
①救助者の片腕に、子どもをうつぶせに乗せ、手のひらであごを支えつつ、頭を体より低く保ちます。
②もう一方の手のひらで、背中の真ん中を数回強く叩きます。
○反応がない場合
反応がなくなった、反応がない場合は心停止に対する心配蘇生の手順を開始します。
同時に119番通報も行うようにします。心配蘇生法と、AEDを使用します。
普段から、AEDの場所についてしっかりと確認をしておくこと、また、使用方法についてしっかりと学んでおくことが大事です。
○心配蘇生法について
心配蘇生(心臓マッサージ)の鉄則は強く・速く・絶え間なく の3つです。
①まずは呼吸の確認です。
胸と腹部の動きを見て、普段通りの息があるかないかをみてください。
②ただちに心臓マッサージを行います
強く:胸の厚さの3分の1程度沈むくらい強く
速く:1分あたり100〜120回のテンポで
絶え間なく:中断は最小に。なんらかの反応があるまで続けます
乳児(1歳未満の場合):両乳頭部を結ぶ線の少し足側を目安とする胸の真ん中を、2本指で押します。
小児:(1歳以上〜16歳未満):体格が大きければ、成人同様に両腕で心臓マッサージを行なってもよい。
※人工呼吸が可能な場合
①まずは気道の確保を行います。
片手で傷病者の額を押さえながら、もう一方の手の指先をあごの先端に当てて持ち上げます。
②交互に繰り返します
心臓マッサージを30回、人工呼吸を2回(1回あたり1秒かけて吹き込む)
○AEDが用意できたら
AEDは、心停止した心臓に電気的なショックを与え、心臓の拍動を正常に戻す装置です。
機械の音声ガイダンスに沿って、簡単に扱えます。
○1分1秒でも早い救命活動が生存率を上げることに繋がります
こちらは、心停止からAEDを使うまでの時間と、生存・退院率を示したグラフです。
これを見ると、通報してから救急車が到着するまでに平均で約10分かかっていることがわかります。
何もしない場合の生存・退院率(黒い矢印)は、1分あたりに7~10%減少することがわかっており、10分経過すると0%になってしまいます。
これが意味することは、救急車の平均到着時間の約10分経過した時点では20%ほどしか助からないことになります。
さらに、脳機能が損失するのは心停止から3~5分といわれているため、救急車を待っているだけでなく、現場での救命活動が必要だと考えられます。
一方、心肺蘇生を行った場合(青い矢印)は、何もしない場合と比較して生存・退院率は高く、心臓マッサージの適切な処置を行うことにより後遺症のリスクを減らせる可能性がでてきます。
現場で心肺蘇生法とAEDを使った、いち早い救命活動が重要になります。
この記事の監修は
看護師・保育士
杉田 しずか
病棟看護師や訪問看護師として10年以上の勤務をした後、認定こども園で看護師として勤務。心肺蘇生法等の資格を保有。
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